第25話
「やべぇ、和樹また当てやがったよ……」
昼休み、和樹はリアラにガチャを回させた結果、またLRを当ててしまった。
周りのガールズブレイカーをやっている奴は、雫がガチャから消えたことで、「おい!誰だよ当てたやつ!」「そいつ探してぶちのめすぞ!」とかなんとか言っている。恐ろしい執念の持ち主が沢山いるようだ。
「和樹君、廃課金者の皆に謝ったほうがいいよ」
「なんで当ててしまうんですか」
「いや当てたのリアラだからな!?」
リアラが若干怒ってる口調で言ってきたが、これは当然和樹も全く予想していなかった事だ。和樹は今まで確定演出以外でSSR以上が出たことがない。
「問題はパーティに入れれるかだよな」
リアラが当たったときはパーティに入れることができなかった。
和樹は早速試そうと雫をパーティの中に組んだ。
「……組めたわ」
ラグやバグが発生する事も無く、あっさりとパーティに組むことができた。
「なんだ、組めたのか」
「なんでちょっと悲しそうなんだよ」
「和樹が修羅場に巻き込まれて女にボコボコにされるのが見たかった」
「ようし、表へでろ」
「冗談だって冗談。それより良かったじゃん。パーティに組めるんだったらもっと強くなったって事だろ?」
確かにパーティに組めることが分かったので、今まで溜め込んだ強化素材やらを雫に全部詰め込んだ。
SSRとはかなりステータスに差がある。これなら戦力も大幅アップだろう。
「もし現実に出てきたらぶっ倒してから追い返します」
「やだリアラ物騒」
何はともあれ、早速雫を試しに使ってみる和樹。今まで少し苦戦していた敵が、雫が入った事により、スムーズに倒せるようになっていた。
「強っ!」
「羨ましいな〜。雫一人で独壇場じゃん」
「何で和樹君だけ当たってるの!」
「いや知らねえよ」
何だかんだ当てた雫はめちゃくちゃ強く、とても頼もしい仲間となった。
―――――――――――――――
その夜、和樹は11時頃まで勉強をしていた。するとリアラが部屋に入ってきた。
「和樹様、紅茶を入れてきました」
「ありがとう」
丁度勉強を切り上げようと思っていたところにリアラはいいタイミングで紅茶を持ってきてくれる。本当に頼りになる存在だ。
「なあ、雫って実際どんな人なのかわかる?」
「いえ……2回程しか会ったことがないのでなんとも言えません」
「そっか……」
実際リアラを当てたときは現実に来てしまっているわけで、雫ももしかすると召喚されてしまうかもしれない。今の所パーティに入れられないなどの不具合や、和真からの連絡もないので取り敢えずは大丈夫だろう。
「また召喚されるのでしょうか?」
「なんとも言えないな。少なくともリアラの時みたいにパーティに入れられないとかはないから大丈夫だろ……多分」
神様の事だ、面白がってまた召喚する可能性もないとは言えない。
それに雫がもし思っていたよりも面倒くさい性格とかだったらどうする?ヤンデレとかメンヘラとかだったらリアラと雫による戦争も起きかねない。
そうすれば和樹の部屋はおろか、マンションも破壊しかねない。
「何もないといいけど……」
和樹はとにかくもうアクシデントが起きないことだけを心配していた。
「……私、引かなければよかったです」
リアラは和樹に聞こえないようにボソッと口にした。
リアラからすれば、もし雫がまた和樹の所で住むとなっては邪魔でしかない。だが、実際和樹はパーティに入れられて喜んでいるので、複雑な気分だ。
「もういいや、考えてても仕方ないし寝よう」
何もない事を願いながら歯を磨がき、リアラと一緒に和樹は暗闇の中に沈んでいった。
―――――――――――――――
「……朝か」
次の日、和樹は珍しく一人で起きることができた。時刻は六時二十分。
ダラダラと歯を磨きながらスマホでガールズブレイカーを開く。一応何が不具合が起きていないかの確認をするためだ。
「……は、ははっ……馬鹿な……」
なんとパーティに入れられていた雫が強制的にパーティから外されていた。
何度もパーティに編成しようとするが、リアラの時と同様で、何故か編成する事ができない。
「嘘だそんなこと!」
すぐに歯を磨き終わり、リビングに向かった。
「リアラ!」
「あっ、和樹様、おはようございます。そう言えば、雫がどんな人か思い出したんです」
おいおい……このタイミングで思い出すとかフラグ臭がプンプンするぞ……。
「ど、どんな奴なんだ」
「確か……雫はレズです。それから可愛いものや可愛い女の子全般に非常に執着心が強いです」
(ん? 思ってたのと少し方向性が違うぞ?)
「ですが、私の時のようにはなっていないようですので、問題ありませんね」
「……」
「……」
和樹は体からどんどん冷や汗が流れ出る。もうこの時点で殆ど確信しているのではないだろうか。
「……」
「な、何で何も言わないんですか」
「……」
「和樹様、冗談はよしてください」
「……」
「何で悲しそうな顔で私を見るんですか!」
リアラも和樹の反応を見て焦らざるを得ない。
ピンポーン
「「──っ!?」」
いつもなら人が来たことを知らせてくれるインターホン。それが何という事だろう。二人には呼び鈴がもう災いが来るという予告にしか聞こえていなかった。
「……どうする」
「わ、私は嫌です。二度目に会った時に付きまとわれたことがあるので。それに雫はドジですから、その時に一緒に転ばされて胸も触られましたし」
(なんて羨ましい奴なんだ……いやそんな事はどうでもいい。そんな大事な事を何故今日思い出すんだ!)
和樹はこの時だけ少しリアラを憎いと思った。
だが、いつものクールなイメージが雫が来るという予測だけでここまで崩れている。余程嫌だったのだろう。
「出ないわけにはいかない。もしかすると宅配便の可能性もある」
こんな朝早くから来る宅配便がどこにいるのだろうか。焦りから二人の思考はおかしくなっていた。
和樹は恐る恐る玄関の扉の覗き窓を見る。
「Oh……」
腰まで伸びたサラサラの黒髪。整った顔で、リアラを超える巨乳。
「……どうしよ」
神様はどうせこの場面をどこかから見てケラケラと笑っているのだろう。
「こんなに凛々しい顔してるのに……」
ここに来る以上、どうせ神にここにいけと言われて来たに違いない。と言うか何で神はこうなると分かって召喚するんだよ。
(え?面白いから)
(心に話しかけてくるな!)
どうせここにいるのはバレてしまっているはず。出ないわけにはいかない。
和樹はゆっくりと玄関の扉を開ける。
「君が宮本和樹か。これから世話になる高野雫だ。よろしく頼む」
こうして挨拶をしている訳だが、何故か和樹は睨まれている。
「あ、ああ、こちらこそよろしく」
はっきりとここで世話になると言っているので、今更どっか行けとも言えないので、受け入れるしかない。それに何故睨まれているのか分からない和樹は、ありえない話だが、何処かで既に会っていて何かやらかしたのでは、と自分の行動を思い返していると、
「……」
「ど、どうかしたか?」
「……可愛いの匂い!」
(何だよ可愛いの匂いって……)
そう言うと雫は凄いスピードでリビングの方へ向かった。
(人の家なんだけど……)
リアラはもうおそらく助からないので、諦めていた。
和樹はリビングで襲われているであろうリアラのもとへ向かった。
「ちょ、離しなさい!やっぱりここに来ましたか!」
「ふふっ、久しぶりのリアラだ!堪能させてもらうぞ」
「……」
これのどこが凛々しいのだろうか。鼻息を荒くさせてリアラにまとわりつく雫の姿がそこにあった。
「か、和樹様!助けてください!」
「いや俺が止められるわけがないし……吹き飛ばされて終わりだ。悪いがしばらく付き合ってやってくれ」
「そんな……」
こうして、色情変態娘の雫を手に入れた和樹であった。
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