第24話 俺の運はまだ尽きてなかったようです

 月曜日、休日の余韻にもう少し浸りたいと思いながら目覚め、いつも通りに顔を洗って歯を磨く。


 そしてリアラが作った朝食を食べた後にログインをするガールズブレイカー。ちょこちょこストーリーも進めたりして、石は40連分程溜まっている。


 そして全く見ていなかったガチャ画面を開く。すると、


「えっ?新キャラ?」


 ガチャのキャラ排出一覧に出ていたのは、新たなLRのキャラだった。


 名前は珍しく日本の名前で、高野たかの雫しずく。リアラのように黒色の髪を腰まで伸ばし、リアラより一回り大きい胸、普段は凛々しく振る舞っているのに、殻を向けばその正体は少しドジっ娘。リアラと同じ歳の設定で生まれた雫の排出確率もリアラと同じ0.000001%。


 この雫も誰かが当ててしまうとガチャからは消失する。


「リアラに続いてLR!これを当てたらまた俺のパーティが強く……いや待てよ」


 和樹が当てたリアラは、当てたのはいいがパーティには入れられなかった。今もボックスの中でコレクション状態になっている。


 もしかすると雫を当てたところでまた使えないというパターンが脳内に浮かぶ。


「んー……取り敢えず学校行こう」


 和樹は考える事をやめて、学校に向かう。教室に入ると、ガールズブレイカーをやっている生徒は新しいキャラが出たと言うことで興奮していた。


 しばらくすると友樹が教室に入ってくる。案の定すぐに机に鞄を置いて和樹の方に向かう。と言っても机は隣なのだが。


「和樹!やっと新キャラ出たな」


「ああ、そうだな」


「なんだ、あんまり嬉しくなさそうだな」


「いや、リアラが出た時の事思ったらそれほど嬉しくはない。パーティに組めたらそれでいいけど、また現実に出てこられたらなんかヤバそう」


「確かにな。けど流石に2回も和樹がLRを当てるは無いだろ」


 それは和樹も思っていたことで、0.000001%の確率を一人が2回も当てるなんてことありえない。確かにとても魅力的なキャラだが、今の俺にはリアラがいるのでめちゃくちゃ欲しいと言う訳ではない。


「友樹はガチャ回したのか?」


「貯めてた石100連分爆死」


「乙です……」


 やはりそう簡単に当たらない。他の生徒もガチャを回しているようだが、当たらずに喚いている。


「ドジっ娘お姉さんとか最高じゃん!絶対当てたいんだよな」


「いや友樹は茜がいるだろ」


「また現実に来るわけ無いだろ、あくまでキャラとしてだ」


 雫はガールズブレイカーのストーリーに出できた時でも、結構な確率で主人公にドジをやらかしている。


「けど俺もドジしてるところが見たい!」


「現実に出たら修羅場になるぞ……」


 そんな話をしているとHRが始まる。


 そして授業を受けているときは、終始雫の事を考えていた。もしかしたら雫は当たらなくてもSSRは出てくるかもしれない。色々な考えが脳内に浮かんでくる。


 そして昼休み、いつもの通り茜が教室に来て和樹の机で弁当を食べている。


 リアラも席が近くなったので、喋りながら食べていた。


「なあ、茜はLR当たったか?」


「回したけど当たんない。あんな低い確率当たるわけないよ」


「当てたやつがここに約1名」


 何故か友樹と茜にジト目で見られる和樹。


「お前ずるいぞ、俺らよりもSSRも持ってる数多いのに」


「当たるもんは仕方ないだろ」


「もしかしたら回したら出ちゃうかも」


 茜は和樹のスマホを奪い、ガールズブレイカーの画面を開く。


「おい、俺はまだ回そうか迷ってるんだ」


「いいじゃん、リアラちゃん当ててから一回もSSRすら出てないんでしょ?」


 そう言うと茜は勝手に10連ガチャを回していく。


「俺のコツコツ貯めた石が……」


「あ〜当たらないよ〜」


 茜はそう言って20連目も回している。そして安定の爆死である。


 そして30連目も回されていく。


「石が……」


「あっ!確定演出だ!」


「何っ!?」


 和樹はすぐにスマホの画面を見る。30連目出でてきたのはSSR。ようやく長い峠を超え、SSRを引くことができた。


「しかも持ってないキャラだ」


「ふふん、感謝したまえ」


 茜はSSRを当ててドヤ顔で和樹の方を見ている。


「はいはい、感謝してます」


「むぅ……いいもん、40連目回しちゃお。……あ、どうせならリアラちゃんに引かせてみようよ」


「私ですか?」


「はい、リアラちゃん」


 そう言って茜は和樹のスマホをリアラに渡した。


 正直30連しただけでかなり痛い出費なのだが、引いてしまったものは仕方ないので、どうせなら引いてしまってもいいと和樹も思っていた。


「あの、良いのですか?」


「ああ、もう仕方ないし引いちゃって」


「わかりました。では……」


 リアラはゆっくりとスマホの画面ガチャると書かれたボタンを押した。


 もしかしたらと期待したが、確定演出はなし。この時点で殆ど希望はない。


 リアラはスマホを和樹に返した。


「あー確定演出ないか。もうスキップしちゃえ」


 和樹はどうせ出ないだろうと、スキップのボタンを連打した。


「…………」


「ん?どうした和樹。いきなり固まって」


「いや……これ……」


 ガチャで出てきたキャラを見てみると、


「当たっちゃった……」


「……はぁ!?」


 なんと和樹はまたLRの雫を当ててしまった。


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