第11話 メイドと年越しした

 大晦日、一年の締めくくりの日で、年越しの準備やら大掃除やらで忙しくなるところが多い。


 和樹達はそんなことが無いように、早めから大掃除をしていた。その甲斐もあり、今はいらない物をチェックするだけになっている。エロ本は隠されていないのでご安心を。


「こっちはもう終わったけど、おせちはどう?」


「私ももう終わりますよ」


相変わらずリアラはメイド服で、今はキッチンでおせちを作っている。


 おせちは市販のものを頼もうと思っていたが、事前に予約をしていなかった為、リアラが作ることになった。


 和樹も少しは手伝ったのだが、殆どはリアラが作ってしまった。流石リアラと言うところだろう。


 作業が終わった和樹は、ソファーに座ってガールズブレイカーにログインしていた。


 今日は大晦日なので、特別なログインボーナスがある。


 そのログインボーナスで貰った石を使ってガチャを回すが、SSRは出ない。運が悪いだけなのか、不具合なのかは知らないが、リアラがいるので別にいいと思っている。


「消してやり直す……いや、頑張ってきたデータを消すのはな……」


「私が消えてしまうかもしれないですね」


 リアラが冗談で口にする。


「消えられたら困る」


「私も消えたくないです」


 リアラもおせち作りが終わったようで、こちらに向かってくる。


 そして当たり前のように、リアラは和樹の足の間に座った。


「……当たり前のように座るんだな」


「駄目ですか?」


「いや嬉しいけど」


 リアラがこうして足の間に座った時は、大抵頭を撫でてほしい時だ。


 リアラが来てから一週間経った頃には、毎日のように座ってくる。そしてそのたびに和樹は心臓をドキドキさせながら頭を撫でている。


(俺はドキドキしてるのにリアラはなんとも思ってなさそうなんだよなぁ)


 どこか負けを感じていた和樹だが、幸福感があるという事は間違いない。


 和樹はリアラの首に手を回し、抱き寄せる。


「どうかしましたか?」


「いや、幸せだなって思ってさ」


「そうですか……私も幸せですよ」


「……なら良かった」


 和樹は再びリアラの頭を撫でる。そして気が済むまでリアラの頭を撫で続けた。




 ――――――――――――――




「もうこんな時間か」


 風呂に入った後は、リアラが作った年越し蕎麦を食べた。蕎麦は市販品だが、蕎麦の香りも強く、蕎麦の出汁も丁度いい濃さだった。


 そしてスマホのゲームをしたり歌番組を見ているうちに、いつの間にか年が明けるまで後5分となっていた。


「リアラがいてよかったよ」


「そうですか?」


「だってリアラがいなかったら、どうせ一人で年越してたし」


「私も和樹様とご一緒できて嬉しいですよ」


「……そっか」


 和樹はリアラが来た日から今までの事を思い返す。


 いつも一人でやっていた事を、リアラが来てからは全てリアラがしてくれた。これからもリアラにしてもらう事が沢山あるだろう。


 だから今のうちに言っておく必要があると思った。


「来年もよろしく頼むよ」


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


 そして年が明ける。今頃都心では、カウントダウンの為に集まっていた人達が騒いでいるだろう。


「明けましておめでとう。今年もよろしく」


「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」


 リアラはリアラらしく丁寧に新年の挨拶をしてくれた。


 明日の朝に初詣に行く予定で、友樹と茜とも合流しようと連絡をとっていた。


「明日に備えてもう寝ようか」


「はい」


 和樹とリアラはいつも通りに、同じベッドに入った。和樹はまだ少し恥ずかしいからか、リアラに背を向けている。


 リアラは和樹の方を向き、密着する。


(やっぱり寝れない!)


 心臓の動悸を抑えるのに時間がかかり、結局和樹はリアラが眠ってから30分経って、眠りについた。

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