歯車

目の前に現れた扉のドアノブに、遥香は手をかける。遥香が扉を開くと、そこは真っ暗な闇が広がっていた。恐る恐る中に入る。


ドアから手を離すと、勝手にドアは閉まってしまう。バタン!という大きな音が暗闇の中でコダマする。


遥香は右手でシュークリームを持ち上げる。すると目の前には道があるのが分かる。道といっても、壁に挟まれた狭い道だ。廊下と言った方がいい。遥香は右手にシュークリームを掲げてその廊下を行く。


何分か歩いたところで、右に曲がる。

曲がるとすぐに大きな部屋にたどり着く。


「綺麗…」遥香は思わずつぶやく。

その部屋は無数の小さな光に支配されていた。暗闇の中に、無数の光…それはまさしく星空そのものだった。


遥香はシュークリームをカバンにしまい、その部屋に入る。小さな光の一つに顔を近づけると、それはただの光ではないことに気づく。


カチッ、カチッ…それは小さな歯車だった。小さな歯車が音を立てながら回転してしている。まるで時を刻むように。カチッ、カチッ…無数の歯車たちは音を立てて時を刻んでいた。しかもみんな固くて透明な糸につながられている。


「星達が歯車にされて捕らえられているようだ」遥香はそう思い、その糸から歯車を外そうとする。でもびくともしない。


遥香は無数の光の中で、途方に暮れた。

どの光も目指すべき道を指し示してはくれなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る