丸山古墳
学校の外はまだ明るかった。日は西に傾いていたが、太陽の光は街に溢れている。
それでもシュークリームが放つ緑の光は、存在感を持って真っ直ぐどこかを指し示している。
遥香は酒井と歩きながら、酒井との出会いを思い出していた。
「遥香って、大阪から来たんだろ?あっちだと星って見える?」
遥香は大阪の生まれだった。小学5年のとき東京に引っ越してきた。
はじめ遥香はなぜか友達が出来なかった。いつも学校で孤立していた。
そんなとき話しかけてくれたのが酒井だった。酒井は星のことを聴きたがった。
「満天の星空って見たことないから、どんなのかなって」
遥香の住んでいた地域は郊外だったから、星空が綺麗に見えた。キラキラしていてとても綺麗だよ…そう答えると「いつか見たいなぁ」と嬉しそうに目を輝かせていた。
それ以来、気兼ねなく話す友達になる。その関係は今も続いている。
そんな2人をシュークリームはある場所に導く。2人の目の前には草木で覆われた大きな岩の塊が現れる。
「古墳だ」酒井がつぶやく。
教科書で見たことはあったが、実際目の前にすると草木の中に身を潜める巨大な怪物のようであった。
「丸山古墳」案内板を遥香は見る。「南武蔵有数の豪族のものとされている」と案内は締め括られていた。
シュークリームから出る緑の光は真っ直ぐに丸山古墳の方に向けられている。
近づくと断崖絶壁のように岩肌がそそり立っているが、上に登るための階段が用意されている。その階段を2人は登り始める。
古墳の中腹に来ると、少し開けた場所があった。その場所の奥には小さな鳥居が立っている。
「あそこでお参りしてくる」酒井は遥香にそう告げる。酒井が神社を好きなことを知っていたから、遥香は驚かない。
ただ、シュークリームはさらに上に行けと指し示している。
「じゃあ私、先に行ってる」遥香は酒井に告げた。ここから先は私1人で行かなくてはならない。なぜか、そんな気がした。
2人はそこで別れる。酒井は神社に、遥香は古墳の頂上へ。遥香は少しだけ強くシュークリームを握りしめた。
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