第31話 #まさぐれの地獄コラボ(クリスマス編)②

「さて続いては月日さんに予想していただきましょう」

「ばっちこい‼」


 まだまだ企画は始まったばかり。次は政木の答えを夕暮が予想する番だ。


「それではお題はこちら。『政木さんは自身のことをMだと思っていますか? それともSだと思っていますか?』という質問です。政木さんが自分のことをどっちだと思っているのか、それを月日さんに当ててもらいます」

「えっ……簡単じゃん…………」


 戸惑った様子の夕暮。コメントも『Mだろ』『Mです』『Mだな……』と同じアルファベットが流れていく。


「ちなみに発表するまでもないんですが、事前の視聴者アンケートでも99.3%の人がMと答えていました」

「99%⁉ そ、そんな……」

「そりゃそうだよ政木くん。政木くんが違うって言っても、世間サマは許してくれないよ。政木くんはMだよM」


 もはや予測ではなくて断言に変わっている。

 しかし政木は、自分がまさかそんな認識をされていたとは思っていなかったので動揺している。


 その動揺を見て、夕暮が察する。


「……まさか政木くん、Sって書いた…………とかそういうわけじゃないよね?」

「……………………ノーコメントでお願いします」

「みかん、解答」

「はい、こちらです」

「あっ、ちょっとっ」


 政木の制止の声もむなしく、林檎が画面の表示を変える。


 そこには自身のなさそうな字で『どっちかって言ったら……Sだと、思います』と書いてあった。


「政木くん…………」

「いや、いやだってですね‼ いじめられるとかそういう痛いのはちょっと……っ」

「そういうんじゃないよ政木くん」


 呆れ顔の夕暮。


「逆に聞くけど、政木くんは人を痛めつける方がいいの?」

「そんなことは……たしかにないですけど」

「まあちなみに言わせてもらえば、わたしは政木くんに首絞めされたいけど」

「首絞めをされたい⁉」

「月日、変な性癖を暴露するな」


 まるで「わたしはラーメンより焼きそばの方が好きだけど」みたいなトーンで言ったので、その異常性がさらに際立つ。


『ドМで草』『政木をお前の性癖に巻き込むな』『でもあの時のボイスは良かった』とリスナーも大半がドン引きしている。


「というわけで政木くんはM! 決定! はいわたし正解!」

「そんな無理やりに……」

「まあ妥当ですかね」


 林檎も夕暮の意見を支持するような発言をしたので、政木が自分自身のことを理解できていないという判決になった。





「じゃあそろそろ、深いところを聞いていきますか。次はこの質問です。『今までに付き合った人数』です」

「…………これか」

「…………これですか……」

「――リスナーさん見てください、これが”地獄”というやつです」


 お題を聞いてテンションが一気に下がる夕暮と政木。


『政木は1人以上確定だけどな』『夕暮は0でおけ?』『政木も1人だった場合が一番悲惨だよな。唯一の彼女に浮気されたってことになるわけだし』『ちなみに僕はぜろ!(白目)』と、コメント欄も一喜一憂するリスナーが現れる。

 ……どちらかといえばうれいているリスナーの方が多かったが。


「よし、分かったよ政木くん」

「な、何が分かったんです?」

「わたしたちだけが晒されるのは良くない。だからまずはそこの果物野郎に聞こう‼‼」

「な、なるほど……!」


 意気投合する夕暮と政木。3人全員でダメージを分ければ1人1人の受ける負担は少なくなる、という発想だ。


 ダメージを分けれ『ば』、ではあるが。


「私ですか? 3人ですよ」

「「……………………っ!」」


 完全に逆効果。どちらかと言えば更にみじめになったと言ってもいい。


『林檎さんさすが』『酒カスでも彼氏できるってマジ?』『あんたの恋人は霧島きりしま(焼酎)と獺祭だっさい(日本酒)と鍋島なべしま(日本酒)だろ』などと意外に思っているリスナーも多かったようだ。


「さてさて、予想してみましょう。相手は交際人数が多そうなのか、少なそうなのか。モテそうなのか、モテなさそうなのか」

「ひでえよ……0人とか予想できねえよ……相手のことをモテない人間だと思ってるって言ってるようなもんじゃねえか…………」

「林檎さん、悪魔だ…………」

「政木さんは既に童貞がバレてますし……今更かなって思って」

「…………今更だからといって、深掘りするのは林檎さんらしいというか……」

「人の心を持ってないのか、この女は」


 遠回しに非難轟々ごうごうの2人。そんな2人の反応を予想していたかのように、林檎は答える。


「そう言われると思ってました。私もそこまで鬼ではありません」

「おっ」

「予想が答えにより近かった方は、特別に交際人数がバレないというルールを付けます。要は配信で流されないようになってます」

「なん、だと……⁉」


 つまり、相手より正確に予想することが出来れば、その人のプライバシーは守られるということである。


 もっと要約すれば、政木と夕暮はたった今から対戦相手になったということである。


「オレには勝たなきゃいけない理由ができたみたいだ。わりいな兄弟」

「こちらこそ、ま、負けられないっ」

「それでは2人にはじっくり考えてもらいましょう」


 こうして仁義なき戦いが始まった。




 ―――――――――――――――



(謝辞)


 文章付きレビューをくださった方、本当にありがとうございます! 思わず読みたくなるような、そんなレビューを書いていただき本当に嬉しい限りでございます……! お礼を言う場がないので、ここでありがとうございますと大声で叫んでおきます。


 また星(☆)、作品のフォロー、作者のフォロー、多くの感想、誠にありがたき幸せ……。特に感想はいつも楽しく読ませていただいてます。レビューもフォローも、書くモチベがズンズン伸びていきます。作者も楽しく書かせてもらってます。


 星もフォローも欲しくないとは言いませんが(※カッコつけている)、それ以上にみなさんが楽しんで読んでいただけるのが一番うれしいです。面白くなかったら感想欄で「今話は面白くなかった」ってハッキリ言ってください(マジで)。反省します、絶対に笑わせてやろうと頑張ります。そして泣いてまた筆をとります。


 まだまだラブコメというにもラブコメをしていない本作ですが、今後ともよろしくお願いいたします。



 P.S. 筆者はお酒に弱くお酒が詳しくないので、「もっと有名な日本酒あるで~」という方は教えてください。ちなみに作者は林檎さんの彼氏について、どれも飲んだことがありません。にわかでごめんなさい。

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