第30話 #まさぐれの地獄コラボ(クリスマス編)①

「さぁ~てえぇぇええ……ほんんんんぅぅぅううじつもはじまりましたぁぁ。んんんんぅぅだいぃいいごかいぃぃぃいいいい、まさぐぅぅううううううrrれれれぇええじごくぅぅうううううこらぼぉぉぉぉおおおお(訳:さて本日も始まりました。第5回まさぐれ地獄コラボ)」

「なぜにタイトルコールが、某アナゴさんなんだ? あとみかん、モノマネ全然似てない」

「さて始まりました、第5回まさぐれの地獄コラボクリスマス編。司会進行を務めます林檎みかんです」

「真顔で進行するんですね……」


 クリスマスイブ12月24日に、今年のVtuber界隈で一番注目されていると言ってもいいコラボ配信が始まった。


「ではゲストの方をお呼びしましょう。まずはこちら。生まれてこの方、クリスマスというものには縁がなかった女、夕暮月日さん」

「おいふざけんな。お前がコラボするって言ったからわざわざ予定を空けておいたっていうのにその態度はなんじゃコラ。はーい、みなさーんに愛のプレゼント届けちゃうぞ! 恋のサンタさん、夕暮月日でーす!」

「草」

「草じゃねえだろ」


 きゅぴという声が出そうな萌え声で話したのは、夕暮月日。『さすが陰キャ』『クリスマスとか知らないのでは……?』『お前がサンタはやめろ。子供たちの夢が壊れる』とリスナーの反応も大きい。


「そして次はこの方。クリスマスにはいい思い出がない、政木有馬さん」

「初回コラボで浮気をされた話をしましたが、浮気が分かったのはクリスマスの日でした…………今日はよろしくお願いします!」

「笑えない、笑えないよ政木くん…………」


『それはマジで同情する』『えげつねえ……』『大丈夫だ、俺もクリスマスの日に仕事から帰ってきたら家に知らない男がいたことある!』とコメント欄も、政木をなぐさめる声。


「というわけで、今日はクリスマスに上手くいっていない2人でお送りしていきます」

「余計なお世話だ!」


 夕暮が必死の抗議をするが、頭がみかんの林檎には全く効果がなかった。


「それでは本日の企画説明に入りたいと思います。今回は…………『お互いのことをどれくらい知ってるの? 2人の理解度をテストしちゃうぞ♡』という企画になります」

「いかにも頭の悪そうなテーマだな」

「内容は簡単なもので、まずお2人には最初にいくつか質問に答えていただきました。『好きなタイプは?』みたいな質問ですね。そして、相手が書いてもらった答えを予想してもらって、”答えと予想がどれくらい合っていたか”で2人の理解度を測ろうという企画です」

「任せろ‼ ワシは政木くんのことなら何でも知っておるぞ‼」

「夕暮さんのことについて僕が当てる……? 難しそう……」


 企画内容を聞いて、自信を見せる夕暮と不安を見せる政木。

 まあ夕暮が自信げなのはいつものことなのだが。


「そして今回は視聴者さんにも事前に予想をしてもらいました。そちらのアンケート結果も合わせて見ていけたらと思います」

「リスナーさんが自分たちのことをどう思ってるのかも分かるってことですね」

「その通りです」

「ちなみに合わせて1万件以上の回答が送られてきました」

「よっしゃあ、行くぞ‼」


 夕暮のかけ声で、本編に突入した。





「まずは簡単な質問からですね。じゃあ政木さんに予想していただきます」

「は、はい!」

「ではお題はこちら。『夕暮月日はいつもお財布にいくら現金を持っているでしょう?』という問題です。最初なので当たり障りのない話題ですね」

「財布に入っているお金、ですか……」


 悩むそぶりを見せる政木。その黙ってしまうタイミングを埋めるように夕暮が質問をした。


「ちなみになんだけど、政木くんはいつもお財布にどれくらい入れて持ち歩いてるの~?」

「僕ですか? えっと、たぶん2,3万円くらいですかね……?」

「おっ、解釈一致」

「ちなみにみかんは?」

「私はあんまり持ってないですね。1万円もないかも」

「あっそ。まあ興味ないわ」

「聞いたくせに……」


 相変わらずの慣れた漫才をする夕暮と林檎。その間、政木はうーんと頭を悩ませている。


「ふふ、政木くんがわたしのことを精一杯考えている……‼ これはもはやカップルなのでは?」

「物は言いようですね。いかにも頭の中がお花畑な人の発言です」

「冗談なのに……」

「それでは悩んでいるようなので、ひとつヒントを」


 林檎は夕暮のことは無視。そして画面に大きな図を映した。

 それはいわゆる円グラフと言うやつだ。


「これはリスナーさんが予想する夕暮月日の財布の中身です。リスナーさんの予想によると『10万円以上』が50%、『100円以下』が40%、残りがその間という答えでした」

「ぶふっ」

「これはまた…………大胆な予想ですね」

「おいリスナー? お前ら、わたしのことなんだと思ってるんだ?」


 リスナーに対して怒った口調の夕暮。『草』『たぶん人間扱いされてないタイプの円グラフ』『100円以下っていう回答欄を作ったそこの林檎に言ってくれ』とリスナーも様々な反応を見せる。


 そして夕暮の質問に答えたのは林檎だった。


「ではアンケート内容を抜粋していきたいと思います。まずは10万円以上だと思った人の回答から……『何も考えず10万入れてそう』『課金用にすぐにコンビニに走れるように?』『2万円の商品に10万円払ってそう』などという意見が多かったですね」

「ロクな意見がないじゃん…………」

「世間の夕暮さんに対する認識が分かりますね……」

「続いて100円以下と答えた回答ですが……『友達いないからお金を使うタイミングがない』『家も出ないから財布を使う機会もない』『夕暮だから』だそうです」

「夕暮だからってどういう意味カナ?」


 リスナーの容赦のない言葉に、沸々と怒りが煮えたぎる夕暮。

 それを察知して、政木が先に自分の答えを発表する。


「こ、答えを書きました、林檎さん!」

「はいじゃあ答えいきます、ドンっ‼」


 ホワイトボードに書かれた答えが配信画面に載る。


「僕の予想は、20万円です‼」

「政木くんもそっちかーい」


 こうしてクリスマスのコラボも大盛り上がりのスタートを切った。


 ちなみに夕暮の回答は「25円」だった。

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