第23話 #まさぐれ+みかんの地獄コラボ(学力検査編)②

「さて次の科目にいくぞ。みんなちゃんとついてきているかな?」

「いえぇぇぇぇーい‼」

「どこかの馬鹿のせいでテンションが低くなりました」

「負けてる……」


 三者三様の思いがぶつかる配信。


「では社会の方を見ていこう。まずこれ。『物価の下落から経済が衰退し消費が減少、その結果さらに物価が下落する現象のことを〇○○スパイラルという?』という問題。ちなみに答えは『デフレスパイラル』で、マサキチ君と林檎君は正解」

「問題文は難しかったですけど、スパイラルって書いてあったので解けました……!」

「まあこれも常識の範疇はんちゅうというやつで」

「夕暮君の解答はこちら。『マサキスパイラル』」

「〇すぞ、夕暮月日」

「目がマジじゃねえかみかん……」


 思わず右手に包丁を持っていると幻視してしまうほどの、林檎の殺気。


『正解する気なくて草』『頭ん中ハッピーだな』『試験中に妄想していた説に一票』などとコメントも擁護できないレベルの不正解だ。


「違うんだって、聞けばわかったよ! 聞けば‼ でもさぁ……テストじゃ分からんもんだねえ」

「もんだねえ、じゃねえよ。ぶっ飛ばすぞ」

「林檎さん、落ち着いて‼ キャラが、キャラが……!」

「……おっといけない。つい取り乱しました」


 政木の必死の呼びかけで我に戻る林檎。


「はい続いて数学。『円の面積の公式を答えなさい』という、まあ小学生でも知ってるような内容だな。まずはマサキチ君の答え。『半径×半径×円周率』」

「もはや政木くんの答えが模範解答みたいになってる……」

「次に林檎君の答え。『直径×円周率』これは惜しいな。円周を求める公式だなこれは」

「うっ……頭が」

「おっと、もしかしてみかん、数学ダメな女子か?」

「……残念ながら」


 林檎は生粋きっすいの文系女子である。

 高校の数学で赤点を取って以来、数学とは縁を切ったという過去を持っている。


「そして夕暮君の答え。『パイ? パイとなんかだった気がする……パイ、パイ、パイ、パイ、パイ……』」

「もはや答えですらない……」

「夕暮さんもしっかり文系タイプなんですね」

「てへっ♡」


 やっちゃったぜ、という顔をしている夕暮。もはや間違えることも、珍解答を晒されるのも抵抗がなくなってきたらしい。


『絶対別のこと考えてただろ夕暮』『パイ暮さん出たわね』などと好きなように言われているが、気にした様子もない。


「それで数学の点数なんだが……マサキチ君95点、林檎君30点、夕暮君10点で大きく差がついてしまっていた」

「2人合わせても政木くんの半分にも届いていないぞみかん‼」

「10点しか取れてないやつのせいですけどね!」

「よしっ、これで同点くらいだ……‼」


 合計点数は、政木が290点、夕暮林檎チームが280点となっている。

 最初に緑先が言ったように、いい勝負になっているという状態だ。


『というかなぜマサキングが勝ってるんだ……』『30点に10点』『義務教育の敗北』などとコメント欄でも総ツッコミ。


「それじゃあ後半戦に行こうか」






「次は理科だな。理科は難易度自体優しかったと思うが、見ていこうか。まずこれ、『月によって太陽が隠される現象のことを何という?』という問題で、正解は『日食』の方だな。林檎君は『月食』と書いていて、とても惜しかった」

「ププ――ッ、間違えてやんのみかん‼ ダッサ‼ ぷぷぷぷぷぷっ」

「う、うるさいですね……」

「夕暮君の答え。『オーロラ』」

「……………………………………次の問題にいこう」

「つい2秒前のことを忘れたとは言わせませんよ?」

「次に行きましょう先輩‼」


 相変わらず喧嘩をし合っている2人。それに対して政木は「5点開いた……」と切迫した感想を述べていた。

 どんどん場がカオスになっている。ちなみに『惜しくもない答えで草』『日食も月食も知らないんだろうな』『とりあえず知ってる言葉を書いた感』というコメントが一番多く寄せられていた。



「じゃあもう一問理科の問題」

「先輩! どうせなら政木くんが間違えた問題が見てみたいです!」

「えっ、いきなり⁉」

「よろしい。といってもこの一問だけだが。『人間や馬は何類に分類されるでしょう?』という問題だ」

「え、哺乳ほにゅう類じゃなかったですっけ……?」

「それは合ってるんだが……『乳』の漢字が間違ってるんだ」

「むほっっっ‼」


 政木の誤答に大きな反応をしたのは夕暮。


「政木きゅぅぅううん、わたしでも乳の字は書けるぞよ~~~~~? 乳っていう漢字はねえ、おっぱいって書くんだぞぉ? 政木きゅんも一緒に練習する? ほらおっぱい、おっぱいって」

「えーと、あとでこの最低最悪のゴミクズは独房に入れておきますので、頼みますから政木さんもお許しください。こいつはセクハラの罪でしっかり殺しておきますから」

「僕は一番やっちゃいけないミスをしてしまったんですね…………」


『カスみたいな煽り』『よほど政木が間違えてくれて嬉しいんだろうな』『通報しました』と夕暮をボコボコに叩く政木リスナー。


「月日のようなかわいい女の子がおっぱいって言うと…………股間に響くものがあるな……」


 一方でどこかのやばいやつのやばいスイッチが入った音がしたが、そのまま企画は最終盤に突入した。


 理科の点数。

 政木……95点。林檎……75点。夕暮……15点。

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