第22話 #まさぐれ+みかんの地獄コラボ(学力検査編)①

「第4回、まさぐれコラボ~!」

「どんどんぱふぱふ」

「い、いえーい……」


 林檎の棒読みに合わせて、適当に盛り上がる夕暮と遠慮がちに盛り上がる政木。


 第4回の夕暮と政木、そして林檎のコラボはずいぶんと慣れてきた挨拶から始まった。


「しかし今回の司会は私ではありません。司会の方をお呼びしましょう、どうぞ!」

「はーい☆ 『Studio Virtual』一期生の緑先ざくろでーす☆☆ よろしくお願いしまーすっ☆」

「頭ん中が空っぽの先輩が来ちゃったよ……」

「こ、これはひどい……私ですらもう帰りたい」

「み、緑先さんだ……!」


 頭を抱えている2人に、恐縮している政木。

 コメントも『ざくろねえだぁぁぁああ』『やべえ、この配信終わったかも』『混ぜるなキケン』と、早くも混沌を予想しているリスナーが多かった。


 そんな反応を見て、緑先が「こほん」と1つ咳払い。


「というのは冗談で。今日は司会を任されているので真面目に行こうと思う。いいかな、林檎君、夕暮君。マサキチ君」

「ま、マサキチ……⁉」

「一体どのキャラを目指してるんですか先輩……」


 ボケたいのかボケないように気を付けているのか、それともその両方なのか。


 新手あらての立ち回りをしてくる緑先に翻弄される3人。そして無視して進めていく緑先。


「それではルール説明をするぞ。ルールは簡単だ。事前に3人には国語、社会、数学、理科、英語の5教科、各100点ずつのテストを受けてもらった」

「受けたぞー」

「そして今回は対戦形式。マサキチ君の点数VS夕暮君と林檎君の点数の合計で勝負だ」

「はーいちぇんちぇー。質問がありまぁーす」

「なんだ夕暮君」

「どうしてわたしとみかんの点数の合計で戦うんでしょうか!」


 順当な質問といえる。


 政木の点数は最高で500点。それに対し夕暮と林檎が点数を合わせると、最高で1000点。どう考えても不公平だ。


 


「はい、いい質問だね。だが答えは簡単だよ。…………夕暮君ひとりでは、勝負にならなかったからだ」

「な、なんですと⁉」

「えっと……先生」


 おずおずと手を挙げたのは林檎。


「なんだい」

「私、そこまで出来が悪かった感触はなかったのですが……。それでも2人の合算ではないといけないんですか?」

「ふむ。これには2つの理由で答えよう。1つは簡単、マサキチ君の点数が異常に高かったからだ」

「えっ、そ、そうなんですか⁉」


 驚いたのは政木。


「うむ。Vtuberという生き物はバカばかりだと思っていたが……マサキチ君、普通に点数取りすぎ。うん。企画にならないかと思ったわ」

「政木くんインテリか~。そういうところもええなぁ」

「そして2つ目の理由はだが……夕暮君の点数が、異常に低かったから、だな」

「…………政木くんインテリか~。そういうところもええなぁ」

「現実逃避をしましたね」


 心なしか、夕暮の目からハイライトが消えている。いや、消えるはずはないのだが。


「そういうわけで急遽林檎にもテストを受けてもらって、それで合算になったというわけさ」

「それで私もテストを受けさせられたんですね。月日がバカだから」

「バカとか言うな‼ こう見えて眼鏡をかけていた時期もあったんだぞ‼」

「もう発言がバカ」

「うう……夕暮さんだけなら絶対にボイス出さなくて大丈夫だったのに……」

「政木くん⁉ どういうことかな⁉」


 夕暮が抗議しているが、林檎としても夕暮のせいでテストをやらされることになった格好だ。

 恨みがましい視線を向けている。


「それで罰ゲームは、負けた側は「ボイス販売」ということで。それじゃあスタートしようか」

「えいやっさー!」

「は、はい! 頑張ります……‼」

「負けません」





 流れとしては、各教科ごとにいくつか問題をピックアップ。そして正答や誤答を紹介したのちに、3人のそれぞれの点数を発表する形だ。


「はいまずは国語ー。『烏賊』の読み方を答えなさい。はい、まずマサキチ君、林檎君の解答はこちら」

『いか』『いか(大好きー♡)』

「ギリギリで思い出せました」

「まあ読めて当然ですよね」

「夕暮君の解答はこちら」

「とりきぞく(ももが大好きー♡)」

「どうして焼き鳥チェーン店の名前が……?」


 政木の純粋な疑問。


『とりきぞくwwwwwww』『食い意地張ってて最高』『同じ「大好きー♡」でも夕暮からは哀愁あいしゅうを感じる』などとコメント欄も最初から大盛り上がり。


「えーこちらの解答、夕暮君はどういう思考で答えたのかな?」

とりっていう漢字に、ぞくって漢字があったんで……」

「ちなみにこれは『とり』じゃなくて『からす』だな」

「…………」

「なんとなく傾向が見えてきましたね……」


 チームメイトのふがいなさにがっかりする林檎。『これは最下位の風格』『みかん氏言葉に詰まる』とコメントも林檎に同情している。


 政木はなぜか「なるほど、たしかに……」と納得を見せていた。


「はいではもう一問。『人間失格』を書いた人物は? これもマサキチ君と林檎君は正解で、太宰治だね」

「またこのパターンか‼ てえてえか‼ ボケが‼」

「いやむしろ間違えたあなたを責めたいのですが……」

「夕暮の答え。『ヤクザ』」

「月日、正解する気があるんだろうな?」

「うるせえあるわボーケ‼ ヤクザが書いてるかもしれねえだろ⁉」


 最初から仲間割れをしている夕暮チーム。


 結果として国語は、政木100点、林檎90点、夕暮25点だった。


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