第16話 #まさぐれの地獄コラボ(2人きり編)②

「『とりあえずゲームを進めてください』ってチャット欄にいるわ、あのアホみかん。……じゃ、じゃあとりあえず始めます……か?」

「そ、そうですね! ダイアモンドを取らないと終わらないですし、ゲームを進めていきましょうか!」


 夕暮と政木はようやくゲームをスタートさせた。


『手のかかる子供たちですねえ』


 それを眺めているみかん。手にはチューハイの缶を持っている。


「じゃあとりあえず、木を……って夕暮さん⁉」

「ちょっ、きゃっ、助けてっ‼ ゾンビが、ゾンビがっ。痛ってえなぁあこの野郎! やんのか⁉ あ、すみません、助けてくださっ」

「落ち着いてください、今助けに行きますから」

『最初から地獄絵図か……。夕暮月日、手のかかる老人であることが発覚』


 コメント欄も、『夕暮、雑魚すぎて草』『態度の豹変の仕方がすこ』などと呆れたコメントが多い。


「とりあえず家を作りましょう」

「役立たずのゴミカスのクズの役立たずですみません……」

「いえ、僕もゲームが上手い方ではないので、大丈夫です!」

「ゲームが上手くない政木くんよりもゲームが下手で生きててごめんなさい」

「生きてて⁉」


 落ち込む夕暮を政木は一生懸命フォローする。


 そして政木がリードをする形で、家の建築に取りかかった。


「…………」

「…………」


 だが今度は単調作業になって会話がなくなる。

 むしろ2人で「会話なんてなくてもいいよね~しょうがないよね~」みたいな空気を作り出している。


 それを見かねた林檎、動く。


「あーあー、聞こえますか2人とも」

「みかん?」「林檎さん?」

「あまりにも配信の画面が面白くなかったので、思わず来てしまいました」

「て、てめえ! わ、私たちの2人きりの空間を邪魔しやがって! 許さねえぞぉ」

「内心は『助けに来てくれてありがとう』って言ってるのが簡単に分かりますね」

「なっ――⁉」


 本心を言い当てられて言葉に詰まる夕暮。

 しかし林檎は長居はするつもりがないようで、あっさり助言をしてまた会話から抜ける。


「家を作ってるんですから家の話でもすればいいじゃないですか。どういう物件がいいかとか、2人とも一人暮らしなんですし弾む会話もあるでしょう」

「な、なるほど……‼」


 目からうろこの政木。


「あとは最近お互いに身の回りであったことを思い出したように話せばいいんです。ほら、そういえば最近はめでたいニュースがありましたね」

「政木くんの10万人……!」

「正解です。では失礼します」


 導師、林檎みかんの導きにより、2人は会話の仕方を思い出す。


「す、すごい……あの方はきっと神だ。これからGODみかんと呼ぼう」

「林檎さんってすごい方だったんですね……。自分も林檎さんに後光が差しているように見えます」

「オイ、オマエら、〇すぞ。はやく会話しろって言ってんだボケ」

「「すみませんでした」」


 そして再び、2人きりでの会話に。






「なに話せって言ってたっけ……あ、そうだ、家‼ 政木くんはどんな家に住んでるんですか~?」

「普通のワンルームです。ちっちゃいところですね」

「最初はそんなもんだよね~。わたしも昔はそうだったし!」


 政木の家はアパートの一室だ。

 社会人になったときに借り始めて、今現在もそこに住んでいる。


「でも引っ越す予定とかないの? ワンルームじゃさすがに手狭でしょ?」

「引っ越したいとは思ってるんですけどね……物件探しになかなか時間も取れないですし……」

「そっかぁ、兼業で頑張ってるんですもんね」


『苦労人政木』『このお金を引っ越し代に使ってください(1万円)』『このお金を生活費にしてください(1万円)』『ワイが、政木を養うんや……!(1万円)』


「……めっちゃ赤スパ飛んでるんだけど」

「わわっ‼ や、やめてください……じゃなくて、えっと、待って。あ、ちょっと、とま、止まって……!」

「10万人記念からお金で殴ることに快感を覚えたリスナーが増えたと見た」


 他人事のように建築を進める夕暮と、動揺で屋根から転落して死んでしまう政木。


「あ、そうそう、10万人記念ですけど……すごかったですよねえ。歌の動画、聴きました~」

「ほんとですか! 嬉しいです、ありがとうございます!」

「『命を叩く』はもともと好きな曲だったんですか? ボーカロイド曲としては結構ポピュラーだよね」

「いえ、実は知らなかったんですけど、マネージャーさんにおススメされて……。すごくかっこいい曲だったので、今では自分も大好きなんですけど」

「マネージャーぐう有能」


『神マネージャーじゃん』『マネさんに感謝』『これは社長の器』


「でも、どっすか? 10万人を越えた気分は」

「正直、嬉しいという気持ちもあるんですが、それ以上に上の方の凄さが分かりました……。夕暮さんや林檎さんみたいに100万人いくのは、本当にもう一皮二皮剥けないと……って思いました」

「剝けた結果、こうなるんだけどね。ちなみに林檎は初配信でド下ネタを言ってるから、あれはただの汚物」


『誰がただの汚物じゃボケ。お前に言われる筋合いは全くないんじゃうんこ』


「ちなみにわたしはずっと清楚担当ですっ! うふっ」

『キモイ』『誰お前』『草』

「夕暮さん、酷い言われようですね……」

「いいんですいいんです。しっかり名前覚えとくんで」

「許さないんだ……」


 そう言っている間に家が完成。無事にゲームも進行していた。


『なんだ。やっぱり2人は相性いいですね。なんだかんだ月日がここまで自然体に会話できるのも珍しい。配信終了はすぐですね』


 配信が終わるまで、あと

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る