閑話:アンジェ2
「え? 実際そうじゃないの?」
「あー……昔話した時、サシャ姉――サーシャって人の話したじゃないっすか、アタシ達のパーティだとそのポジションがその人なんっすよ」
そう話すアンジェは複雑な感情を顔に出していた。あこがれのような、諦めのような、あるいは嫉妬のような。
「流石に何百倍も生きてるエルフにお姉さんなんて思われるわけがないっすから、実際パーティだと頼れるお姉さんってより、使い勝手のいい下っ端って言うか……」
「大変なのね、あなた達も……」
イリスはずっと一人で旅をしてきていた。だからアンジェの悩みにも実感はわかないし、パーティを組んで旅をするという事にも憧れがあった。
「ニル兄からは年下どころか、子ども扱いされてる節があるっす」
「まあ、ニールはそういう所あるわよね」
口を尖らせるアンジェに、イリスは笑みを零した。
確かにあの男は、自分と対等な相手を作ろうとしていないように見えた。ただ、それはイリスたちを部下として使うという意味ではなく、敬う相手と守る相手に分けているように感じる。
「む」
「どうしたの?」
不意に、アンジェが頬を膨らませた。
「アタシは『さん』付けで呼ぶのに、ニル兄は呼び捨て……もしかしてイリちゃんも――」
「す、好きじゃない! 好きじゃないから!」
イリスは慌てて両手を振る。しかしそれは余計に怪しまれる結果となる。
「あっれー、アタシはまだ『好きなの?』って聞いてないのに、反応が早いっすなぁー?」
「あー! そんなんじゃないから! ちょっと話す機会が多かっただけ! そ、それより!」
顔を真っ赤にして否定するイリスは、アンジェからの追及を逃れるために話題を変える。
「わたし『も』って聞くって事は、アンジェさんはニールの事……」
「……ん、好きっす」
イリスと同じくらい顔を赤くして、アンジェはゆっくりと頷いた。
「いつから、って訳じゃないっていうか……もう、初めて会った時から反則っすよね……見ず知らずの穢れ血を、なんであそこまでして助けてくれたんっすかね」
実際には、彼女を取り巻く環境から、母親もろとも救い出したのは、カインの行動によるものが大きかった。しかし、アンジェにとって、道端で終わっていくはずだった自分を拾い上げたのは、ニールなのだ。
「まあ……お人好しなんじゃない?」
「あ、やっぱそう思うっすか?」
二人は顔を合わせて苦笑いする。
色々と真面目にリスクやリターンを考えているようで、根っこの部分ではそれらを度外視したお人好し。そんな印象を彼女たちは持っていた。
「はー、意識してもらうために、子供っぽい一面とか、ふとしたサービスショットとか、そういうのを見せてるんっすけど、全部空回りしてるんっすよね」
「いや、アンジェさん、悪いけどそれ全部逆効果……」
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