第20話 隊列防衛戦3
罪源職が更生を見込めない場合、処刑という極端な対応をするのには、理由がある。
罪を改めなければ、それは深くなり、烙印となる。
烙印はその肉体を強化し、その力により罪はまた深くなる。
繰り返されるその循環によって、人類にとって最も危険な存在へとなっていくのだ。
「……」
超巨大な戦鎚を構え、仮面の烙印持ちは攻撃の予備動作に入る。
「竜炎っ!」
左手から炎が迸り、対象に命中するものの、それは一切怯みすらせず、攻撃動作に入った。
「ニル兄っ! バフお願いっす!」
「――っ、筋力強化(パワーエクステンド)!!」
俺は身をかがめ、アンジェに筋力強化の支援魔法を発動させる。
横薙ぎに襲い来る戦鎚に対して、アンジェは地面につき立てた大盾を斜めに構えていた。正面から受け止めることを放棄し、方向を変えていなす防御だ。
「ぐぎぎっ……どりゃあ!!」
「っ!?」
大質量の戦鎚は、アンジェにぶつかった瞬間に軌道を変えて、空を切る。仮面の人影は驚いたように息を飲むと、戦鎚を引き戻して次は振り下ろす攻撃に切り替えてきた。
「ニル兄っ!!」
「分かってる――空圧波っ!(エアブロウ)」
空圧弾とは比べ物にならない強さの空気弾が放たれ、振り下ろされる前に戦鎚は後ろ方向へぐらつき、倒れる。
態勢を立て直すよりも早く、駆けだしていたアンジェを追うように走り出す。
「アンジェ、伏せろっ! 神雷っ!」
頭を下げたアンジェを追い越して、神速の雷撃が仮面の男を襲う。普通であれば戦闘不能になるほどの攻撃だったが、男は効いているのかいないのか、全身から煙をふき出しつつも、反応を返す事は無かった。
距離を詰められ、武器の大きさが不利になると悟った仮面の男は躊躇なく戦鎚を捨て、腰に差していた一メートル程度の金属棒を抜き放ち、アンジェに向かって走り出した。
「っ! ――っとぉ!?」
咄嗟に大盾で受けられたのは、単に運が良かっただけに過ぎない。文字通り、目にもとまらぬ速さで放たれた横薙ぎは、大盾を変形させるほどの威力で放たれていた。
もちろんそんな速度で打ち込まれれば、アンジェが立っていられるはずもない。彼女は横方向へ吹き飛ばされると、地面に倒れこんでしまう。
「アンジェっ!! くっ……!!」
こちらに来る。そう思った瞬間、仮面の男は急に方向転換し、本体の方へと進路を取る。
なぜ? 一瞬思ったが、その疑問は即座に氷解する。目標は聖女だ。
男は凄まじい速さで隊列の中を縫い、ひときわ豪華な馬車に鉄棒を振るい。扉をこじ開けた。
「加速っ!!」
俺は咄嗟に支援魔法を使い。地面を蹴った。
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