第60話 魔眼:サリエル7
「あれ、頭狙ったんだけど」
「念力だ。恐らくは魔眼の能力」
俺の隣まで跳躍し、首をかしげるサーシャに説明する。
恐らくこの念力は、かなり強力で、発動も容易らしい。完全な不意打ちで、サーシャの矢を回避は出来ないものの、狙いをずらすことはできるのだ。正攻法でどうにかできる相手じゃない。
「ギギィッ……」
開拓者は刺さった矢を抜くと、こちらへまっすぐと飛ばしてくる。念力によって強化された速度は、反応すら難しかった。
「っ!!」
だが、反応できない速度ではない。俺は左手の魔力収束炉でサーシャをかばう。激しい金属音が爆ぜて、指向性を失った矢が宙を舞う。
「あぶなかっ――」
「くあっ!?」
瞬間、矢が再び速度を増し、サーシャの太腿に深々と刺さった。
「サーシャ! くっ……」
念力により、速度を失った後でも二段攻撃として投擲武器を使える。
こちらの魔法や射出系の攻撃は認識している限り回避され、認識外の攻撃も狙いを逸らされ致命傷とはならない。
遺物持ちの魔物が、ここまで強力だとは……
一方の俺は足を氷漬けにして辛うじて動けるだけ、サーシャも今の攻撃で足を封じられた。撹乱戦術は不可能だろう。
「ニール」
「……なんだ」
必死で勝算を導き出そうとしていると、サーシャが声を掛けてきた。
「貴方は一人じゃないわ」
言葉はそれだけだった。
だが、それで十分だった。
「……ああ」
魔力収束炉に魔力を通し、起動する。これは村の工房で職人が作ってくれたものだ。矢をはじいたくらいではビクともしない。
俺が魔法を使う事を察知して、開拓者は再び石のつぶてを展開し、こちらへ射出してくる。
「――加速」
ここまで来て、正面突破はゴリ押しで品が無いと思う。だが、戦いは勝てば正義だ。
「サーシャ! ぶちかませっ!」
「了解っ」
支援魔法による超高速連射。
数発では躱されるのがオチだが、認識できないほどの物量で押しつぶせばどうか。
「ギギギッ!?」
いきなり想定外の物量で押し寄せる矢の雨に、開拓者は驚きの声を上げるが、すぐに念力を矢にかけて方向をずらし、何本かの矢をこちらへ飛ばしてくる。
「はぁっ!!」
致命傷は避け、サーシャを守り、最低限の回避で矢を捌いていく。何本かは腕や肩に刺さるが、それでも開拓者にも何本か矢が刺さっていた。
「くっ、あああぁっ!!」
サーシャが叫び、矢はさらに数を増す。開拓者の使う念力も徐々に押され始める。
「……」
だが、一歩及ばない。矢筒が空になり攻撃が終わっても開拓者はボロボロになりながらも立っていた。
「ギ……ギギッ、ヒ……」
そして、それは勝ち誇ったように両手をひろげて念力を発動させると――
「そこまでっす」
「ギベッ!?」
背後から忍び寄っていたアンジェに、頭を潰された。
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