第39話 決勝――第八試合②
『これはすごい‼ もうすでに20キル‼ チーム『カップル』勢いが止まりませんッ‼』
『もう誰彼構わず見える敵全てをなぎ倒していってる感じだ……。まるでブルドーザーみたい。おそらく二人ともかなりの集中状態にありますね。リミッターが解除された状態っていうんでしょうか、たぶん本人たちも『なんでもやれちゃう』って感覚にあるんじゃないでしょうか』
『ヒーローさんもそういう集中状態にあった経験があるんですか?』
『大会とかに出ていた時はありましたね。それでも滅多になかったような気がするかな。ああいう状態の時はなんでもできるような感覚になるんで、二人も今が一番楽しいんじゃないかなと思います』
『そうなんですね。それではこの後も引き続き試合の方に注目していきましょう!』
「あと3部隊……あいつらはまだ生きてるんだよな?」
『キルログを見てる限り10キルくらいはしてるかな……。あとまだ生きてる』
「まあでもあいつら倒して優勝すれば……いけるな」
こっちのキル数は合わせて32。1位を取ればその順位ポイントで勝てるはずだ。
3位以内は確定した。あとは相手を優勝させなければいい。
「ここからは慎重に……」
『じゃあまずは弱い方から倒そうか』
「え?」
安全策を提案しようとした俺の声を
「いやでもここで負けたら意味がないだろ」
『そうね。じゃあ負けないように戦うしかないわね』
「脳みそが筋肉のやつのセリフだな」
Xが明らかに大会始めに比べて好戦的になっている。明らかに躊躇みたいなのが消えて、目の前のキル1つにギラギラと視線を向けていた。
「まあしゃあねえか」
俺も覚悟を決めてXに付いて行くのを決めたそのタイミングだった。
「いや待て」
『なんで――』
Xが言葉を放とうとしたタイミングで、今まさに向かおうとしたところからいきなり銃声が響いた。
一瞬だった。ババババッって鳴ったかと思ったら、すぐに静かになった。
『先に潰された――?』
「……みたいだな」
キルログにはチーム『R』の面々があっさりとチーム『Animals』を壊滅させたことが無機質に表示されていた。
その横にはこの戦場に残っているチームが俺らとやつらの2チームになったことも表示されている。
「ってヤバい、ポジション取られた」
『厳しいね』
さっきまでイケイケだった俺たちは冷や水を浴びせられたようにその勢いを失う。
高い位置を相手に取られ、気づいたころには俺たちは草原の中に転がった2つの丸太にそれぞれ体を隠す羽目になっていた。
「これはマズイ」
顔を出して相手の位置を確認しようとするとすぐに撃たれるから、場所を変えることができない。
『どうしたら……』
「ちっ、優勝はもうすぐそこだっていうのに……っ‼」
俺たちの焦りは増すばかりだった。
「右奥が坊や、左手前が女の子ね」
『どうする? 詰めようと思えば詰められると思うが』
「無理ね。でも坊やの方はスナイパーライフルを持ってないみたい。この意味、分かるよね?」
『ああ、Fruitsの彼女が持ってるスナイパーを渡させないようにする、だろ』
「OK」
ポジションはこっちの有利。しかも安置はこっちに寄るみたいだから、彼らはこっちに詰めてこないといけない。
九分九厘勝てる状況だけど、それでも油断はしないようにマウスをもう一度握りしめる。大丈夫、勝ち方は知ってる。
……あとはきっかけをもう一つ。
『頭当てたぞ‼』
「どっち?」
『Fruitsの方だ‼ 行くか?』
「いえ、距離は詰めないで。その代わりW方向に50メートル行って」
『……おう!』
アイアンメンは実力としては少し物足りないところがあるけれど、こうして私が
さて、頭の中で今のマップと状況を整理する。敵の位置、HP状態、味方の位置、残りの弾数。
自分の中で勝つビジョンが明確に見えた。
「いい? 私は坊やの方を撃つから、あなたは当たらなくてもいいからひたすら女の子の方を狙って」
『合図は⁉』
「3,2,1,いまよ」
『おう‼」
女の子の方は自分の体力がないから、焦りで選択肢が狭まる。エイムは普段よりも落ち、そしてエイムが合わないからと普段とは違う動きをしてしまう。
相手は別にまだ顔を出していないのだから落ち着いて体勢を立て直せばいい。だが着実に自分の喉元へと近づいている銃口を前に、どうしても撃ち返さなくてはという心理になる。
そして――味方の射線に入ってしまう。
【siX_sense → Fruitsmix】
『おい、あいつら自滅したぞ‼』
「呆けてないでさっさと確殺して」
『おう』
坊やの方がスモークグレネードを使って蘇生を試みるが、煙が濃くなる前に確殺を入れることができた。
これで2対1。勝率は90パーセン――
『……は?』
しかしそんな思考がよぎった私の目の前に現れたのは、思いもしないキルログだった。
『siX_sense → アイアンメン』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます