第34話 決勝――第三試合①

 結局、第一試合はRainyのチームが10キルで1位、つまり30ポイントを獲得した。俺たちは2キルで順位も下の方なので、彼女たちのチームとは28ポイントも離れてしまったことになる。


 そして続く2回戦でもRainyチームが15キル1位、つまり35ポイントの獲得。そして俺たちは8キルをすることはできたが順位がやはり伸びなかった。第二収縮までは生き残れたが順位は34位。結果としてRainyチームとは57ポイントも離される結果になってしまった。


 そのせいでXは俺にも分かるような形で落ち込んでいる。


『ごめん……本当に私のせいだ』


 二試合目は立て続けに4チームが漁夫に来て、ようやくそれを捌いたところで5チーム目にやられてしまった。


 ただ戦っていた場所が悪かったわけでもないし、1つ1つの漁夫を倒すスピードが遅かったわけでもないと思う。それこそ運が悪かったとしか言いようがないだろう。普通は漁夫に来ないであろう有利なポジションを抑えていたチームまで来ていたことを考えると、もはやどうしようもない。倒してきたチームがストリーマーであることを考えれば、一種の引き立て役になってしまったことも想像に難くない。


 ――それに。


「大丈夫だ。なんとなくだが、攻略法は見えてきた」

『……本当に?』

「ああ。はじめだけ任せろ。それでお前も分かるはず」

『わ、分かった』


 さあ、逆転の第一歩を踏み出すぞ。





 降りたのは北西にある『火力発電所』よりもさらに端にある、名のない土地だ。


『ねえ、本当にこんなところで大丈夫? 物資とか全然ないけど』

「まあ見てろって」


 俺はXに指示を出してさっさとこの無名地帯を抜け火力発電所に向かう。


 俺が持っているのはアサルトライフルとサブマシンガン。Xもスナイパー1丁にアサルトライフルで防具がほぼ最弱だ。

 貧相な戦士である。


 それでも俺たちは意気揚々と火力発電所に乗り込んだ。


『ねえ、戦うの? 戦うんだったら最初からここに降りてた方が』

「敵だ」

『あ、ちょっと!』


 ぶつくさ言っているXを無視して、俺は敵に向かって発砲する。

 サブマシンガンだから反動が強い。2発当てたところで敵に身を隠されてしまった。


「Xも撃ってくれ。お前の方が武器は強いんだから」

『あとで説明は、あるんでしょうねっ!』


 Xも自分の不利を知っているからか、躊躇せずに半ば諦め気味に銃を放つ。


『半分は削った!』

「よし、詰めるぞ」


 Xの報告を聞く前から詰めてるけどな。


 スモークグレネードを相手側に投げて視界を潰すと同時に、俺は一気に相手のいる建物に突っ込む。2階建ての兵舎のような場所で、満足に広くない。


 俺は人ひとり分しかない廊下を、途中途中部屋に隠れながら走っていく。相手は回復をしているのか、顔を出していない。


 俺は2階、Xは1階から詰めていき相手の存在位置を絞っていく。

 どうやら相手は反対側の階段側にいるらしいな。


「階段にいる。お前の方から銃声を鳴らしてくれ」

『ったく、指示ばっかりして』


 バラバラとXが撃つ音に合わせて俺も手りゅう弾を投げ込む。2階側から投げたそれは、確実に階段へと入った。


 足元に手りゅう弾。爆発まで数秒。そんな状態で敵が取る行動など、決まっている。


 Xの方に、2人で飛び出すに違いない。


「行ったぞ‼」

『う、うん!』


 誘い込み漁のようにつり出された敵は、Xによってなすすべなく倒された。


「ふう、おっけ」

『すごい……だけど、すぐに漁夫を警戒しなきゃ……‼』

「大丈夫だ、そんなすぐには来ん。しっかり漁って次に行くぞ」


 そうだ、来るはずがない。なぜならここはマップの端っこだからだ。


 プロプレイヤーは絶対に来ない。こんなところで油を売っていては安置収縮で真っ先に飲まれるここは不利でしかない。ここから見て東と南に降りていたやつは絶対に安置に向かっているはずだ。


『でもストリーマーは? 勝敗も気にしてるとは思うけど、さっきだって変なところから来たよ』

「あれは第二収縮だったからだ」

『……どういうこと?』

「こんな試合の序盤も序盤のところで負けてたら見てる側もつまんないだろ? まあもしかしたらストリーマーにも勝敗を強く意識しているやつもいるかもしれないが、それだったらプロと同じように安置に向かうはずだ」


 しかも現在の1位はRainyたちのチームでぶっちぎっている。1位を1回でも取らないと総合優勝できないことは誰でも分かっているはずだ。まさかキル数であのチームに勝とうと思っているチームがいるはずもない。


 だからこその端降り。火力発電所に降りなかったのは、武器を拾う前に戦って死ぬような運ゲーにならないようにするためだ。


「俺たちなら多少装備が劣ってても勝てる。だろ?」

『……それなら先に言っておいてほしかった』


 不機嫌な感じがびんびんに伝わってくるX。だが、彼女にもこの大会の勝ち方というものが分かったに違いない。


 そうすると残る問題はただひとつ。


 ――Rainyに勝てるかどうか、だ。




 ――――――――――――


 解説シーンが多かった今回ですが、FPS用語の解説の方もやります。



 FPS解説⑥ 武器の種類


 今作のゲーム「ToBF」では武器の種類が4つ存在します。それぞれスナイパーライフル、アサルトライフル、サブマシンガン、ショットガンの4つです。それぞれ遠距離向け、中長距離向け、中近距離向け、近距離向けです。「ToBF」では正直に言ってスナイパーライフルとアサルトライフルが覇権ですが、ゲームによって異なることが多いです。AOEXではショットガンが猛威を振るっていていますし、FOrtniteでは……すみません、専門外です。


 ちなみに初心者はアサルトライフルとサブマシンガンを持つことがどのゲームでもおすすめです。使いやすいですし味方に貢献しやすいです。ショットガンは弾が一発も当たらないことがありますし、スナイパーライフルは味方との距離感を合わせるのが難しかったりします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る