未神楽ミコ。わたし鬼にとりつかれたよ。
第10話 ヒツジの鬼は仲間外れだよ。
「最後の鬼は……わたしの中にいる」
わたしは、鏡の中のあおみどりいろの部屋で、モニターにうつっている、
「(最後の鬼は……わたしの中にいる)」
わたしの声は、教室のスピーカーから流れていった。
(ほんとうにどういう仕組みなんだろう……)
「な、なんだってーーーー!?」
「な、なんやってーーーー!?」
トンデモなくおどろいた。
そりゃそうだよね。
わたしを攻撃するはずの鬼が、わたしのなかにいるんだもん。
わたしだっておどろいた。
だってね。気が付いたの、本当についさっきなんだよ。
ついさっき、心が「チクン」としたときに、ようやく気がついたんだよ。
「なんだってー!?」って、わたしの告白におどろいていた
「なるほど、なるほど……
「なんでしょう?
「
「OK!」
そう言うと、蛍光カラーにかがやくイルカは、黒板にむかって光をはなった。
黒板は、まるでプロジェクターみたいに「ぼぅ」っと
おっきなイヌと、ドラゴン、そしてウシの鬼が、糸でがんじがらめになっていた。
鏡の中のあおみどり色の部屋に写っているモニターとおんなじだったから、わたしは、モニターで見ることにした。
「さすがは
モニターに、お父さんが半分にみきれてカッコいいポーズをとっている。
モニターは、空中にうかんだあおみどり色のうずにきりかわった。
うずの中から、
「きた、きた、最高の目が出た!
ちがう、よく見ると剣の先っぽに、でっかいカタマリがくっついている。
キラキラとかがやくでっかいカタマリ。ハンマーみたい。ゴールデンハンマー。
ゴールデンハンマーを持った
「うおりゃあああああ!」
と、思いっきりちからをこめてゴールデンハンマーをふりあげた。
すっごいちからもち。
「
「キャンキャン!」
「グオオオオオオッ!」
「モオオオオオオッ!」
三匹の鬼は、まっくろなけむりになって消えさった。
「楽勝!」
「楽勝♪」
「楽勝! ミコ! お父さんがんばったよ!」
ミコ
そして、お父さんだけ、よけいな事を言っている。なんだかちょっと恥ずかしい。
こまち先生は、ビックリした顔で言った。
「さすが巫女のナイトや! 鬼をあっちゅうまにたおしてもうた」
「いえ、今回は、鬼がそろっていなかったからです」
「さきほど言ったように、
攻撃力特化のウシの鬼。
素早さ特化のドラゴンの鬼。
知性特化のイヌの鬼。
そして、防御特化のヒツジの鬼
ヒツジの鬼が前衛で攻撃を受けながら、ウシの鬼とドラゴンの鬼が、
「なるほど、その防御を担当するヒツジの鬼が、
こまち先生の質問に、
「はい。
おそらく、ミコ様と普通の生徒の区別がつかないまま、うっかり体の中にしのびこみ、そのまま出られなくなったのでしょう」
「そっかぁ……」
こまち先生は、目をゴシゴシとふいた。泣いていた。
「鬼は、心の弱った人にとりつく。でもって、その人の心の中で力をつける。
犬居さんは、クラスで一番美少女の、
鬼にとりつかれた犬居さんが、
こまち先生は、がっつりおちこんで、その場にへたりこんだ。
「ウチは先生失格や。
でも、
「(こまち先生……)」
わたしがつぶやくと、声が教室のスピーカーから流れた。
こまち先生は、スピーカーにむかって正座をして、頭を下げた。
「ごめんなぁ!
ごめんなぁ!
ウチは先生失格や! でもって、
「とんでもない!」
「とんでもない!」
教室の二方向から、声がした。
ひとつの声は校長先生。教室のドアをガラリとあけて入ってきた。
もうひとつの声はお父さん。二回の教室の窓に立っていた。
校長先生は、教室のゆかにへたりこんだこまち先生の前にすわって、こまち先生の目をまっすぐと見て言った。
「こまち先生ほど、生徒に好かれている先生はいませんよ。こまち先生が先生失格なら、生徒に人気のない私は人間失格だ」
たしかに! 校長先生はお話がものすごく長いから、ものすごくキラわれている。あと全然お話が楽しくない。
お笑い好きでアイドル好きで、いっつもニコニコしているこまち先生の話とはおおちがい。
「
今度はお父さんが言った。お父さんはヨタヨタと教室の窓をまたぎながら言った。
「ミコの神通力が暴走したとき、こまち先生に、どれだけ助けてもらったか。記憶をなかったことにできる、
「でも……」
こまち先生はメソメソとなきづづけた。
わたしは、胸が「チクン」とした。こんなの全然こまち先生じゃない。
こまち先生は、いっつもニコニコ笑っている先生なんだよ。
いっつもニコニコ笑って、天然ボケで楽しい先生なんだよ。
だからね。わたしは言った。
「(先生がやめるんなら、わたしは学校行きません!! 学校がつまんなくなる!)」
するとね。
「それはアカン! 学校はオモロいところや! 楽しいところや! いかんとソンや!」
ってこまち先生が言ったから、言いかえしてやった。ビシッと言いかえしてやった。
「(わたしは、こまち先生がいないと楽しくないです!
わたしは、こまち先生が好きだもん! 小町先生がいないと楽しくないです!)」
そしたらね。こまち先生は、
「未神楽さん、こんなポンコツな先生をゆるしてくれるん?」
って言った。
わたしはさっぱりわかんないから聞いてみた。
「(ゆるす? なにを?
こまち先生のせいじゃないって、お父さんも校長先生も言っているよ? こまち先生はがんばってるよ)」
そしたらね。こまち先生は、すっくと立ち上がっておっきな声をだした。
ふっきれたようにさけんだ。
「そうやな……それにウチはまだ仕事が残っとる!!
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