第7話 わたし、転校生になったよ。

 風水ふうすいくんに変身したわたしと、わたしに変身した風水ふうすいくんは、なかよく肩を並べて小学校に入った。そして、あくびをしながら、凪斗なぎとくんもついてきた。


 校庭のグラウンドをつっきって、校舎に入ってうわばきにはきかえた風水ふうすいくんがいった。


「じゃあ、先に教室でまってるね♪

 凪斗なぎと! ニコラちゃんをよろしく♪」


「わかってるよ風水ふうすい

 ミコには指一本ふれさせない!」


 わたしに変身した風水ふうすいくんは、ニコニコしながら凪斗なぎとくんにすごんだ。

(ややこしいからこれからは、ミコ風水ふうすいくんって呼ぶね)


「学校では、ボク未神楽みかぐらミコ、キミが守るのは、ボクじゃなくて、ニコラちゃん。そこんとこ、よ! ろ! し! く!」


「わかったぜ! 風水ふうすい!」


 ミコ風水ふうすいくんは、あきれた顔をした。


「…………はぁ。ダメだこれ」


 凪斗なぎとくんはキョトンとした顔をした。


「?? どうした? 風水ふうすい?」


 ミコ風水ふうすいくんは、すっごいコワイ顔をした。


凪斗なぎとが余計なことしゃべると、ボク達が入れかわってるのがバレちゃうでしょう!?

 いい? 学校ではボクたちに、絶対に話しかけないで!!」


「…………わかった」


「よろしい!!

 じゃ、ニコラちゃんは、凪斗なぎとといっしょに校長室行ってね♪

 大丈夫、校長先生は事情をしってるから♪」


 ミコ風水ふうすいくんは、ニコニコしながらそういうと、トントンとリズミカルに階段をあがっていった。



 そんなわけで、わたしは今、凪斗なぎとくんといっしょに校長室にいる。


「いやー、さすが勾玉まがたま先生、とてもおみごとな納音なっちん術でした。


 校長先生は、相生そうじょうくんのことを、ものすごくほめている。

 なんでもおととい、わたしのために相生そうじょうくんが、学校中に結界をはってくれたんだって。

 あとついでに、トイレにいたオバケも成仏させたんだって。


「さすがは、勾玉まがたま先生。マサチューセッツ工科大学で、最先端のデジタル納音術なっちんじゅつを研究していただけのことはある」


 あたまがぐるぐるする。


 相生そうじょうくんは、小学校には行かないらしい。

 アメリカの大学に留学して、そこを卒業してるからだって。

 すっごいカシコイんだって。


 あたまがぐるぐるする。


勾玉まがたま先生の論文はすごいんだよ!

 ぜひ、特別顧問こもんとしてお招きしたい!!」


 あたまがぐるぐるする。


 校長先生が、相生くんのことをってよんでいる。ってよんでいる。(顧問って、たしか先生のパワーアップ版だよね??)


 なにがなんだか、わけがわからない。


 わからないけど、とりあえず、校長先生はわたしと凪斗なぎとくんたちのヒミツをぜんぶ知っているってことらしい。

 わたしが神様の生まれ変わりで、三人のナイトに護衛されてるって。


 コンコン。


「失礼します。丁番ちょうつがいです」 


 明るい関西弁のトーンで、わたしのクラス、五年二組の担任の、こまち先生が入ってきた。

 丁番ちょうつがいこまち先生。1年の時から、わたしはずっとこまち先生のクラス。

 ヘンテコな名字だから、みんなこまち先生ってよんでいる。


 こまち先生は、入ってくるなりゴキゲンだった。


「ええー? この娘が、変身した未神楽みかぐらさん? めっちゃカワイイ!!

 でもって、こっちがつるぎのナイト凪斗なぎとくん? なんや、めっちゃ足が速そう!!

 これでようやく、ウチの負担がへります。めっちゃ助かる!」


 え? どういうこと?


「こまち先生は、陰陽師おんみょうじなんだ。

 未神楽さんが入学してから、ずっと護衛を頼んでいるんだよ。

 日本有数の陰陽師おんみょうじだ」

 

 え? そういうこと?


「そんな! 未神楽みかぐらさんのお父さんに比べたら、ウチなんてまだぺーぺーです。

 納音なっちん術の詠唱えいしょうをすっ飛ばなんて、一個くらいしかできませんし」


 どういうこと? またお父さんがほめられた。


納音なっちん術の詠唱えいしょうをすっ飛ばして使いこなすなんて、並の陰陽師おんみょうじじゃあできません。未神楽みかぐら先生は大天才です! わたしのお師匠さんです。めっちゃ尊敬してます」


 ……そうなんだ。あのしょぼい術、そんなにすごかったんだ。


 校長先生は、苦笑いしながらいった。


「おいおい、こまち先生。きみがぺーぺーなら、日本の陰陽師おんみょうじは全員ぺーぺーになってしまうじゃないか」


「とんでもない!

 巫女みこのナイトがおります。おととい、神社に鬼がおそってきたって、未神楽みかぐら先生に聞きました。

 未神楽みかぐら神社の結界けっかいをやぶるほどの鬼を、あっという間にやっつけたらしいじゃないですか!

 もう、常識では考えられんくらいの強さです! めっちゃ強い!」


 そうなんだ。やっぱり凪斗なぎとくんたち、めっちゃ強いんだ。


 キーンコーンカーンコーン


 チャイムがなると、こまち先生があわてていった。


「あ、もうこんな時間!? ほな、未神楽みかぐら……じゃない、かがみさんとつるぎくんは、先生についてきて」


「あ、は、はい」

「はい!」


 わたしは、こまち先生につれられて、二階にある五年二組の教室に向かった。


 ううう……緊張するなあ。うまく風水ふうすいくん……じゃない! ニコラちゃんのふりできるかな? 心配だよ。

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