第3話 ナイトはすっごく強かったよ。

結界けっかい決壊けっかいまで十秒……九……八……七……六……五……四……三……二……一』


 バリーン!


 さえぎるモノなんてなんもないハズの正門せいもん鳥居とりいを、イノシシ頭の鬼がタックルをして、まるでガラスを割るかのようにとびこんできた。

 そしてイノシシ頭の鬼をとびこえて、トラの頭の鬼が、ものすごいスピードで、わたしに変身した風水ふうすいくんにおそいかかってきた。


 わたしに変身した風水ふうすいくんは、ニコニコしながら手を「パン!」とたたくと、


壁上土へきじょうど!」


って、さけんで、たたいた手をひろげて「くるりん」と回転した。手からキラキラと光があふれた。すっごくキレイ。


 トラ頭の鬼は、わたしに変身したキレイな風水ふうすいくんを、空気をよまずになぐりかかった。


「ガオオオオオ!」

「ほい♪」

 ……カキン!


 わたしに変身した風水ふうすいくんは、三メートルもあるトラ鬼のパンチを、片手でひょいってうけとめた。


「がおおおおおおおおおおおおおぉ!」

「ほい♪ ほい♪ ほい♪」

 ……カキン! カキン! カキン!


 わたしに変身した風水ふうすいくんは、三メートルもあるトラおにのパンチを、まるでダンスをするみたいに、うけながした。よくみると、手に、オレンジ色した半透明のシンバルみたいなものをもっていた。あ、もってはないか? ういている? 手から、ちょっとはなれたトコでうかんでいる。


 わたしに変身した風水ふうすいくんは、半透明のシンバルで、ニコニコしながらトラおにのパンチをうけながしている。

 そしたらね、金棒かなぼうをもったイノシシ鬼が攻撃にくわわった。


 すっごく重そうな金棒かなぼうをふりかぶって、わたしに変身した風水ふうすいくんになぐりかかった。


「オマエの相手は、オレ!」

 ガギィイイン!


 イノシシ鬼の攻撃を、凪斗なぎとくんがうけとめた。


 すっごい音がして、凪斗なぎとくんのあおみどり色の剣と金棒かなぼうがぶつかった。


「それそれそれ!」

 ガギィイイン! ガギィイイン! ガギィイイン!


 すごい! 凪斗なぎとくん、あんなでっかいイノシシ鬼を、攻撃している。攻撃しまくっている。


「ブモッ!」


 イノシシ鬼は、たまらずバックステップした。そして、足で「ガシ! ガシ!」って、境内けいだい玉砂利たまじゃりをあきあげた。あれだ。テレビでみた闘牛とうぎゅうがやるやつ。このあとすっごいスピードで、つっこんでくるやつ。


「ちょっと!? あの攻撃ヤバくない?」


 わたしに変身した風水ふうすいくんが、トラ鬼の攻撃をダンスするみたいにうけとめながら、凪斗なぎとくんを心配した。


「ヤバイ! ヤバイけど、気合でたえる!」


 え? 気合でなんとかなるものなの?


「ブモッーーーーーー!」


 イノシシ鬼は、ものすごいスピードでつっこんできた。


桑柘木そうしゃぼく!」


 さけんだのはお父さんだった。お父さんがさけんだら、イノシシ鬼のあしもとに、葉っぱがまった。葉っぱがまったと思ったら、いきなり糸がふきだしてイノシシ鬼の足にからまった。


「すごい! お父さん!」


 でも、いとはあっけなくブチブチとちぎれた、


「しょぼい! お父さん!」


 イノシシ鬼は、ほんのすこしだけスピードをゆるめて、凪斗なぎとくんにつっこんだ。


「気合だぁ!」

 ガギィイイン!


 凪斗なぎとくんが、あおみどり色の剣で、イノシシ鬼の攻撃をうけた。ちょっと後ろにおされたけど、なんとかたえた。


 すごい! 凪斗なぎとくん、本当に気合でなんとかしちゃった!

(あと……お父さんのサポート、意味があったの?)


 わたしが、凪斗なぎとくんの気合にびっくりしつつ、お父さんのサポートに首をかしげていると、相生そうじょうくんがさけんだ。


「さすが未神楽みかぐら先生! カンペキです! 僕もようやく準備ができました! ヘイ! オルカ!


『OK! 桑柘木そうしゃぼく!』


 相生そうじょうくんがさけぶとフワフワういているあおみどり色に光るイルカがへんじをした。

 とたんに、あたりが緑色の葉っぱにつつまれた。つつまれたと思ったら、葉っぱから大量の糸がふきだして、イノシシ鬼と、トラ鬼をがんじがらめにした。


木行もくぎょう拘束こうそく! からめて八卦はっけ! 失礼致しつれいいたす!」


 え? お父さんと同じだよね。「桑柘木そうしゃぼく!」ってさけんだよね。

(ぜんぜんちがう。おとうさんショボイ……)


 相生そうじょうくんはさけんだ。


「とどめだ! 凪斗なぎと風水ふうすい!」


「りょーかい!」

「りょーかい♪」


 凪斗なぎとくんはポケットからサイコロをだして転がした。

 わたしに変身した風水ふうすいくんは、凪斗なぎとくんの剣に、半透明はんとうめいのシンバルでチョコンとふれたあと、手をおおきくひろげた。


 凪斗なぎとくんは、転がったサイコロの目をみてガッカリした。


「ゲ! 〝そん〟と〝〟どっちもハズレだ!」


「だからいったろう! バカ凪斗なぎと!!」


 相生そうじょうくんがツッコんだ。凪斗なぎとくんは気まずそうにサイコロをひろいにいった。


「ざんねん凪斗なぎと♪ じゃ、ボクはおさきに♪」


 そういうと、わたしに変身した風水ふうすいくんは、ひろげたを「パシン!」とたたいた。

 とたんに、うかんでたオレンジ色のシンバルがおっきくなった。イノシシ鬼とおんなじくらいにおっきくなった。そして、


「バッシーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!」


って、イノシシ鬼をサンドイッチした。イノシシ鬼は、ぺしゃんこになってえた。すごい! あっという間にやっつけちゃった!


土行どぎょう反転はんてん! かえして八卦はっけ! ごめんね♪」


 わたしに変身した風水ふうすいくんは、アイドルみたいなキメポーズをした。そして、


凪斗なぎともガンバレー♪」


と、ニコニコしながら凪斗なぎとくんを応援した。


「今度こそ!」 


 凪斗なぎとくんは、もう一回サイコロを転がした。


「よっし! そろった! 釵釧金さいせんきん!」


 凪斗くんは、剣を後ろにかまえると「ズバッ!」と、目にもとまらぬ速さでつきだした。剣は「バヒュン!」とのびて、トラ鬼の首をつらぬいた。


金行きんぎょう邁進まいしん! つらぬく八卦はっけ! 御免ごめん!」


「ぐおおおお!」


 首をさされたイノシシ鬼は、葉っぱみたいにバラバラになって消えた。すごい! 凪斗なぎとくんもたおしちゃった。


『ミッションコンプリート!』


 相生そうじょうくんの横でフワフワしているあおみどり色のイルカがさけんだ。

 すごい、あんなおっきな鬼を、三人であっというまにたおしちゃった。

 (ところで……お父さん、戦いに参加する必要あったのかな??)


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