未神楽ミコ。わたし神様だよ。

第5話 神様はダンスが好きだったよ。

 朝が来た。日曜日の朝が来た。

 冬休みのさいごの日の朝が来た。


 わたしは、お父さんがつくってくれた、あさごはんを食べた。

凪斗なぎとくんと、風水ふうすいくんと、相生そうじょうくんといっしょにたべた。


 でもって、みんなで食器を洗ったあとに、アニメをている。

エンディングで、ダンスをおどる、女の子がたたかうアニメをている。


 そしてアニメをながら、わたしは、相生そうじょうくんにいろいろ教えてもらっていた。


「つまりミコ様は、日本の最高神、アマテラス・オオミカミの生まれかわりなのです」


「オオカミ? わたし、オオカミの神様なの?」


「ちがいます。巫女みこのおすがたをしており、太陽のようにおおらかな性格で、あとけっこうな天然です。それからスネてプチ家出をします。大岩土おおいわどにバックレます」


「プチ家出! わたしもやった! 神社のすぐそばにある石階段のところで!

 お父さんにおこられて、そこにかくれたの! 

 けっきょく、一時間くらいで帰ったけど」


「しょぼい!」


 凪斗なぎとくんがツッコんだ。


「しょうがないでしょ。家出をしたのは一年生のときだよ?

 アニメがはじまっちゃうもん。今、ちょうどテレビやってるアニメの、まえの、まえの、まえの、まえのやつ。

 エンディングのダンスはいっしょにおどるでしょう?」


「しらん」


 凪斗なぎとくんがクールにツッコんだ。


「しょうがないでしょう。一年生のころだよ?

 ふつうは、いっしょにダンスをおどるでしょう??」


「しらん」


 凪斗なぎとくんがまたクールにツッコんだ、相生そうじょうくんはクールにせつめいをづづけた。


「アマテラスも、プチ家出から、ダンスを見たくなってもどります」


「わたしとおなじだ!」


「そして、そのダンスをおどっていたのが風水ふうすいのご先祖様です」


「そうなんだ!」


「うん♪ だからボクは、歌とダンスがダイスキ!」


 風水ふうすいくんはそういって、テレビから流れるアニメのエンディングのダンスの曲にあわせて、「シャキン」とかわいくポーズした。

 サラサラの金髪ツインテールと、水色のフリッフリッでふわっふわのワンピースが「ふわりん」とゆれた。そして首にかけている、おっきなペンダントみたいな、あおみどり色の鏡が「キラリン」とかがやいた。


 カワイイ、本当にカワイイ。お人形さんみたい! フランス人形!


 そっか……わたし、本当に神様なんだ。

 オオカミ……じゃない、アマテラスっていう神様なんだ。


 ん? でもまって、しょぼくない? アマテラスってしょぼくない?


 だって、うちの神社ってぜーんぜんご利益りやくないよ?

 わたし、ぜーんぜん彼氏できないよ??


 わたしが首をかしげていると、相生そうじょうくんが話をつづけた。


未神楽みかぐら神社が、恋愛のパワースポットとなったのは、ミコ様がこの神社に生まれたからです」


 え? どういうこと??


 お父さんが、コーヒーをすすりながら、相生そうじょうくんの話にのっかった。


「そうだよ。この神社はたしかに由緒ゆいしょはあるけれど、ミコが生まれる前までは、どこにでもある、ふつうの神社じんじゃとかわらなかったんだよ」


「え? ホント??」


 女の子がたたかうアニメのオープニングがはじまったときに、コーヒー豆をガリガリとひきはじめて、CMに入ったときに、わかしたお湯をポタポタとそそぎはじめて、ちょうどエンディングのダンスがおわったときに、ようやくこだわりのコーヒーをすすりはじめたお父さんは、話をつづけた。


「ホント。未神楽みかぐら神社が恋愛のパワースポットってよばれはじめたのは、お母さんがミコを妊娠してから。

 そして、ミコが大きくなるにしたがって、ご利益りやくがハンパなくなったから、今では結界けっかいを作ってご利益りやくをおさえている」


「え? 本当に本当??」


「本当に本当。ちなみに未神楽みかぐら神社に、誕生日のいぬこくにおまいりすると、恋愛のご利益りやくがあるっていわれているのは、その時間の夜七時〜夜九時にはミコが家にいて、まだ寝てないから。

 その時間なら、ミコのご利益を確実にさずかることができる」


「本当!? 本当に本当???」


「本当に本当に本当。

 ちなみに、誕生日たんじょうびにおまいりするとご利益りやくあるってのはウソ。

 そうでもいわないと、おまいりする人があとをたたないから」


 なんてこった。


 わたしは昨日、自分にお願いしようとしてたってこと?

 自分に「イケメンの彼氏ができますように!」ってお願いをしようとしてたってこと??


 え? ちょっとまって??


 てことは、わたしのお願いってだれにたのめばいいの??

 「イケメンの彼氏ができますように!」ってだれにたのめばいいの??


 なんてこった。


 神様ってちっともいいことない。

 うううぅ……本当に不幸だ。

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