第2話 出会いと出合い
「もしかして、あなた、あかりちゃん...?」
「えっそうだけど」
「やっぱり! やっぱりそうだ! この声! この感じ! あかりちゃんだ!」
いきなりガっと体を引き寄せられ驚く。
ついさっき新入団選手のお披露目が終わり、控室に戻ってきたばかりだ。
周りの選手はみんな初対面ということもあり、みんな話しかけていいのか悪いのか分からず微妙な空気が流れている部屋の中で、いきなりフレンドリーに接されたのだから驚かない訳がない。
「えっーと、私達知り合いなんですか...?」
「えっ、あかりちゃん私のこと覚えてないの!?」
今度は体をのけ反らせて一歩後退する。
この反応を見るからに相当ショックを受けたようだ。
もしも本当に知り合いなら、その人の名前や顔を覚えていないということは失礼にあたるだろう。
でも、うーん...。
身長は私と同じくらいだろうか、黒くきれいな髪はハーフアップでまとまっており、この距離でもいい匂いがする。
さっきの行動を見ればそうは思えない人もいるだろうが、見た目はThe清楚といった感じで「やまとなでしこ」という言葉が真っ先に頭の中にでてきた。
「じゃあ、これでも分からない?」
「ふぇっ?」
抱きしめられた、やまとなでしこに。
あまりに自然な動作で全く反応できなかったが、部屋の中にいた他の選手たちの驚きの声や悲鳴のようなもので我に返る。
やまとなでしこの肩越しに、赤面したり目を覆っている選手を見つけ一気に私の羞恥心のメーターが上がる。
「えっちょっなっなにを」
「大丈夫、大丈夫だよあかりちゃん、私たちならできるよ、私たちは負けないよ、二人が信じ合えば、乗り越えられない壁なんてないよ」
「えっその言葉、どこで」
その言葉は忘れない、忘れてなかった、でも。
まさか、本当に?
今の言葉で全て理解した、この言葉を知っているのは私と、もう一人しかいない。
ずっと忘れていた記憶の蓋が開き、その名前が自然と口から漏れていた。
「来未...ちゃん...?」
「そうだよ、来未だよ、久しぶりだねあかりちゃん」
私を満面の笑顔で見つめるやまとなでしこの姿が、私にはとても小さく、泣き虫だった「あの頃」の来未ちゃんの姿に戻ったように見えた。
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