前・夜

...ぉぅ......ぉう


何か聞こえる?


......じ...ぉぅ...

真っ暗闇の中、一筋の眩しい光が見える。

俺は、そこに手を。


「じろぉーーーーーーー!おきてぇーーーーー!!」

そう叫びながら、俺の頬を赤くパンパンになるまで、泣きながら引っ叩くシイナがいた。


「いてぇ!いてぇ!起きたから!もう辞めてくれって!」


「あ...。ぐすん..じろぉー!」

そう言うと、力強く抱きしめてくる。


「おいおいおいなんだよ。何があったんだ!?」


「え..?次郎覚えてないの?」


「覚えてないのって、なにが...はっ!」


思い...だした!


俺はシイナと魔力の調整とかなんとかで、全然魔力が出せずに撃沈しちまったんだ!


「いやーすまない。ちょっとコントロールができてなくって。」

精一杯誤魔化す。それしかなかった。


「え?そうなの?ったく!心配させないでよ!バカ!」

誤魔化せたようだ。しかし、シイナは虫の息のおれにとどめの一撃を披露し、またもや気絶し目が覚めたらベットの上だった。


「ちょっと次郎ー。いつまで寝てるのー?はやくご飯食べちゃってー。」


下の階から、母親のような催促が聞こえる。こういう場合はまだ完全にできてなく、最中の可能性が非常に高い。ってのは今は関係無しとして、すぐに一階へと降りていこう。


「もう、魔力のコントロールを間違えて気絶しちゃったんですって?ほんとダラしないんだから。誰に似たのかしらね。」

チラッと父親らしい人に視線を向ける。

いや、ここまで気絶したのは、誰かさんにトドメを刺されたからであってね。


「はーはっは!らしいじゃねえか!次郎!全く、エリートだなんだと言われても、おまえも俺の血を引いてる証拠だなあ!?」

声高らかに笑いのける。...なんでこんなハイテンションなんだ。この親父は。

と。考えていたところで、黙々と食事を取るシイナに気づいた。

ていうか!コ、コイツ!まさか、俺へのトドメを隠蔽したのか!?恐ろしい!主犯は何食わぬ顔で飯を食っているのか!?

と思ったが、皿に箸をつついているだけで、口には食事を運んでいなかった。というか、若干、青ざめた顔で視線だけをこちらにチラチラと向けて、様子を伺っていた。

気にしてんのかよ!

まっ、今回は俺が悪かったところもあるし大目に見てやるか。そう自分に言い聞かせようとした瞬間。


「ま、全く!なにやってんだかね!次郎は!」


コイツ!!許さん!

「まぁさっさと食べちゃってね。明日は初クエストなんでしょ?はやく寝なさいよ。」


「おー!ついに明日か!気合入れてけよ!次郎!」

一言一言がうるさい親父だ。必ず最後にビックリマークが必要なようだ。


「そうよ。だから今日は夜更かし禁止ね!」


「...へいへい。わかりやしたよー。」

言い返す気にもなれなかった。どうせ無駄なんだと、何故かそう俺の心入っていた。


そして再びベットの上。

(しかし、この世界は一体なんなんだ?前世っていうか前の記憶もありゃあ、こっちの世界の記憶も少しづつだが、何故か思い出せる。謎だ..)

少しこの世界のことを考えてから寝ようと思ったが、その2分後、夢の中へと行ってしまった。

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