13(12) シー
もう一度だけ、そう決めて二人で会った、初めは水族館。
彼女は大人になっているようでその笑顔や好奇心旺盛さは変わっておらず、魚たちの静かな空間でコロコロと表情が変わる様は見ていて楽しかった。
終わったあと、名残惜しくて俺はつい「もう一度、もう一度だけ会わない?」とお願いしていた。
その後は学生時代最後の春休み、時間を見つけては二人で会った。カフェにも、岩盤浴にも、下北沢の散策にも。あと月島にもんじゃを食べに行ったっけ。
いろんなところで遊んだ。たくさん話した。まるでお互い会っていなかった空白の3年間を埋めるように。
大学に入ってからはバスケ部一筋でしばらく遊んでいなかった俺にとって、穂波とのデートは毎回新鮮で楽しいものだった。
そんな毎日はこれから付き合って、長く続くと思っていた。それぐらい会っているときはお互い幸せだった。
しかし、それも長くは続かない、なんて言うと大袈裟だが、俺の勤務地が決まった。
「三坂了さんは、名古屋勤務ですね」
東京から電車で3時間そうはいっても、彼女と頻繁に会えなくなるのは確実で、その時俺は覚悟を決めた。
彼女と会う春休みの最終日。俺は、穂波にディズニーシーに行こうと切り出した。
シーでの彼女はすごくテンションが高かった。ずっとディズニーに行きたいと言っていたからだろう。
その様子を見て、俺はなかなか、勤務地の話を切り出せなかった。
やがて伝える別れを、どう切り出そうか迷っていた。
結局夜まで切り出せず、あたりが次第に暗くなり、穂波が、アラジンのコーナーに来てこう言った。
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