14(1) カルーセル
「カルーセルだよっ」
私は言った。
「メリーゴーランドじゃないの?」彼は聞く。
「メリーゴーランドじゃなくてカルーセルっていうの。メリーゴーランドは時計回りでしょ。カルーセルは反時計回りなの」
アラジンのエリアで「カルーセルに乗りたい!」と私が頼んだ時だ。
彼はそんなの何が違うんだ、という顔をしていたが、私の嬉しそうな顔を見て、どうやらにやけている。
ああ、こんな彼のことが好きだ。私は気づいてしまう。
この時が終わらなければいいのに。この一瞬が、この時間が、永遠に続けばいいのに。
そんな月並みなことを思いながら、日が暮れてより美しく照らされていくシーで、キャラバンカルーセルは次第にスピードをあげていく。
周囲の景色が次第にぼやけていく。横に座っている彼の輪郭だけが、この世界ではっきりと形を保っている。
反時計回りは左回り?あれ?そんなことをぼんやりと考えながら、私は小さな声で「好きだよ、恋させてくれてありがとう」とつぶやく。
赤と黄色でライトアップされたカルーセルは、徐々に、スピードを上げていく。
私は彼との初めてディズニーを、ぼやけていく幸せな思い出を、味わっている。
思えば私たちは初めから、お互い逆方向に向かっていた。今度はきっと…。
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