6(3)  恋

私は気性の激しい人間だ。怒るときは劣化の如く怒って、楽しい時は誰よりも笑える。そんな自分のことが嫌いではない。こんな性格なのだ。

それはわかっていて、でもだからだろうか、みんな私に対してどこか一線引いてみている、ということを中学のころからなんとなく感じるようになった。


だから高校の頃の私はなるべく明るく振る舞って、でもそんなに怒ったりはしない人間になろうと入学時決意した。

…でもやっぱり理屈の通っていない、みんなにとって正しくないことにはきちんと異議を唱えることはやめられなかった。


そしてそういった自分の意見を推し進めていくと周りの優しいみんなは譲ってくれて、私は尚更自分の道が正しいと信じてやまなくなった。

そんな時だ。

彼に出会ったのは……。


彼とはそう、三坂くん。

2年の頃からクラスが一緒になった彼はどこか物憂げで、女遊びが激しいと噂のバスケ部のエースとして有名だった。

まあ確かに、顔は少し濃いめだけど綺麗な二重だし、短く整えられた髪で颯爽と歩く185センチの彼を女子はみんな気にしていた。

でも入学してから何度も告白されているとか、〇〇ちゃんが振られたとか、そんな噂ばかりが入ってきていた。

彼はクラスでも1、2絵を争う成績優秀者で、スポーツも万能で、誰にでもそれなりに優しくて、そりゃ、モテるわなあ、と私は他人事のように思っていた。



だからそんな彼が私と3年時になって英語のプレゼン発表の際、意見が対立してお互い譲らなかった時には驚いた。

彼の提案したアイデアが私のものと異なっていて、私は思わず、

「このテーマだとわかりづらいよ!」

「これじゃあ反論されるし、結局何を伝えたいの!」

と言ってしまった。言ってから伝え方が激しすぎた、よくない、と思ったが彼はイラつきながらも建設的な議論をしてくれた。

こんなにまくし立てるように伝えたのに「それは的を得ているね」なんて言ってくれて、結果私たちが本気でぶつかって作りあげたプレゼンは当時私の中で1番の出来だった。


その時からだろうか。

私が激しく人と意見を戦わせたのにそれでも面と向かってぶつかってくる三坂くんのことが、私は少し気になってきていた。


その一件以来、私と三坂くんはクラスでよく話すとようになった。

話してみるととても理性的な人で頭の回転がよく、いろんなことを知っていた。話していく中で思っていたチャラ男といったイメージは払拭された。


それにしてもこう、気になっている異性の友人というのはどうなのだろうか。

別に恥ずかしいことではないが、私には「恋」というものがわからなかった。

私が今三坂くんに向けているのは恋なのかどうか、実のところ私は18年間生きてきて恋人ができたことがないのだ。


漫画やドラマの世界でしか見たことのない恋、よくその明るい性格から彼氏ができたことがないというと驚かれるが、それがなおさら私を不安にさせた。

みんなどんなふうに恋人を作るのだろう。王子様のような人といつか巡り会えるのだろうか。


自分の理想は年齢を重ねるごとに比例して大きくなっていた。


だからかもしれない、友人であり少し気になっている三坂くんからの花火大会の誘いは、恥ずかしくて、とても嬉しかった。


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