2  告白

僕、三坂了ミサカリョウは自慢じゃないが中学の頃からなんでも器用にこなせてまあまあモテた。

成績もクラスで上位だったし中学では卒業までに5人もの女子に告白された。つまり常に彼女がいた。

けれども何度も告白されるということは、何人もの人と付き合っていたということで、一人とは長く続かなかった。

だがリョウは、男女はそういうものだと割り切っていた。

高校でもそれは変わらなかった。勉強は嫌いじゃなかったので県内有数の進学校に合格。

中学から続けたバスケでは1年時こそベンチだったものの、2年時からはエースとしてチームを引っ張った。

つまりスポーツも勉強も人並み以上にできた。人並み以上にモテた。


だけど、、、だからか時々自分でも、本当にしたいことがわからなくなる時があった。


それは特に恋愛に関して顕著だった。


高校1年の時クラスメイトにもてはやされてボブカットが似合う女の子3ヶ月付き合った。

その子との冬休み前、6限終わりの放課後だっただろうか。

部活が休みの日で教室に二人残って勉強していた際にはっきりと言われた。


「三坂くんはさ、私に興味ないよね」


「え、そんなことはない…」そう言おうとしてやめた。

事実、僕は付き合って3ヶ月にもなるその子のことを何も知らなかったからだ。

彼女のボブカットが好きだった。彼女の外見が好みだった。

クラスメイトにお似合いだ、なんて言われて付き合ってみるかなんて思っていた。

しかし本質的には、彼女に興味がなかったからだ。


…可愛くて、でも、それ以外彼女のことを知らない自分には正直気づいていた。

おとなしくて、こちらの話を笑って聞いてくれる彼女に甘えて自分の話ばかりをしていた。


彼女は続けてはっきりとした口調で「三坂くん、私のこと好き?」といった。


「好きだよ」僕は自分でも白々しいと思いながら答えた。


「ねえ、私のこと、本当に好き?」僕は少し彼女が面倒になってきた。


「本当に好きだよ。…俺の言葉が信じられない?」


中学時代に経験したいつものながれだった。

付き合って、手をつないで、ディズニーに行って、キスをして、……。

恋愛のやることはそれなりにやって、それでも続かず結局2、3ヶ月後には別れる。

こちらとしては去るもの追わずの姿勢なので構わないが、どうして女子は皆一様に「好き」を確認したがるのだろうか。

いや、違う、本当はわかっている。自分の「好き」が薄っぺらいのだ。本当に好きだと思っていないのが見えてくるのだろう。

でも、だからと言ってどうだというのだ。先に好きになってきたのはそっちじゃないか。


「そんなつもりじゃないの、でも、寂しくなって」彼女は心細げにいう。少し涙が浮かんでいるように見える。


僕はだんだん彼女の返事に応えるのが面倒になっていた。

しかしこういった時に雑な別れ方をすると後々自分に悪い噂がつくこともしっていた。

そのためなるべく穏便に別れようとしていた。そしてそんな周りの目を気にしている自分が嫌いだった。


「もういいよ、悪かったよ」、そう思いながら彼女の僕への指摘は至極真っ当なものだと思った。


僕はしばらく考えるふりをして、手元にあった書きかけのノートを閉じて、言った。


「別れよう」


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