第51話「美味しいね」
「うーん、美味しいー♡」
エヴァはパフェを食べながらごきげんな感想を漏らす。
「満足してくれて何よりだ」
と礼音はホッとする。
「日本の料理は美味しいわね。見た目は変わってるけど」
とエヴァは微笑みながら感想を言う。
「舌にあったようでよかったよ」
礼音は微笑みを返す。
もっといいものを食べられるだろうとは、彼女には言えない。
長らく闘病生活を送っていたのだから。
すでに出ていたが「これから」なのだ。
「日本での食事は気に入ってくれたかい?」
と彼は聞く。
彼女は感情がはっきりと出るタイプだからわかりやすいが、念のためだ。
「ええ、最高よ!」
エヴァは笑顔で言いきる。
「ニホンに来れて本当によかったわ! あなたに会えたし!」
彼女は心の底から言っていた。
そしてアメリカ人だからか、とてもストレートだ。
「俺もエヴァに会えてうれしいよ」
と礼音は応じる。
社交辞令みたいになってしまったが、気持ちにウソはない。
エヴァはいまも周囲の視線を集めるほどの美少女だし、いっしょにて楽しい相手だからだ。
年下の女の子とふたりでいるのに気まずくならないなんて想像したことがない。
すこし前の自分に言っても、とても信じられないだろう。
「学校はいつからなんだ?」
と礼音は聞く。
「明日からよ! 日本のハイスクール楽しみね!」
エヴァは明るく言う。
新しい環境に不安になったりはしていないようだ。
(たしかに彼女らしくないけど)
会ってまだそんなに時間は経ってないが、彼女は明るくて前向きで周囲にエネルギーを与える少女だと礼音は思う。
「土日だけなんだよね、俺たちが会えるのは」
そのほうがいいかもしれないと彼は考えている。
こちらの生活に慣れるのが大変だろうからだ。
「えっ? なぜ?」
とエヴァは目を丸くする。
「うん?」
おやっと思って礼音が首をひねると、
「ワタシは毎日会いたいわ! レオンは【アルカン】に一日いたりするの?」
と彼女は身を乗り出して聞く。
「いや、そうでもないよ」
と礼音は答える。
しばらくの間は日帰りしかやらないつもりだ。
彼は何の責任もなく、リスクを冒す必要もない。
「何ならあっちに行く必要もないか」
いま気づいたと礼音はポンと自分の膝を軽く叩く。
「ただ、それだとヒマなんだけど」
とつぶやくと、
「じゃあ明日もワタシとデートしましょうよ!」
とエヴァが笑顔で申し出る。
「え、いいけど」
礼音は軽い気持ちで承知した。
(デートってふたりで出かけることだろうしな)
と思う。
女の子とデートと考えると緊張するが、今日と同じことでいいなら気楽に臨める。
礼音としてはそんな心境だった。
「やったわ! じゃあ待ち合わせ場所と時間を決めないとね!」
とエヴァは喜んで話を進める。
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