第33話「プレジャーシステム」
「あなたが気に入ってくれたなら、手続きを進めるとしよう」
とリチャードは言う。
「よろしくお願いします」
礼音に言葉にうなずいたあと、
「では次にはミカヅキオフィスの件だな」
とリチャードは続ける。
「おじい様、お茶をしたいわ!」
途中でエヴァが遠慮なくぶった切り、自分の要望を告げた。
「おっと、すまない。下のカフェでひと休みしようか」
リチャードは目を細めながら謝る。
(どこかうれしそうなんだよな)
と礼音は思う。
元気になったエヴァとの会話は何でも楽しいのだろうか。
そんな雰囲気が伝わってくる。
三人は二階のカフェに降りて、四人掛けの座席で紅茶を頼む。
「まずエヴァだが、ミカヅキオフィスの従業員でお願いしたい」
「わかりました」
リチャードからの要求に礼音は即答する。
拒否権がないに等しいが、断る理由もないのだから関係ない。
「あと異世界【アルカン】に関する貢献度をあらわした、プレジャーシステムについては知っているかな?」
とリチャードは聞く。
「いえ、知りません」
礼音は目を丸くしながら首を横に振る。
「あなたは貢献度的にランクインするはずだが……」
とりチャートは怪訝そうにしたあと、
「わたしが話してはいけないというルールもないので、言ってしまおうか」
自分で結論を出す。
「お願いします」
礼音としては気になる名前なので、続きをうながす。
「【アルカン】から持ち帰った素材などを基準にした評価が、こちらの世界じゃランキングに掲載されるんだよ。それが【プレジャーシステム】だ」
とリチャードが語る。
「ランキング、好きですね」
礼音が困って言うと、
「わかりやすいのはたしかだ」
彼は苦笑しながら答えた。
「異世界法人を作ればほぼ確実にランキングに放り込まれる。あなたもそろそろ自分で確認できるはずだよ」
とリチャードが言う。
「もしかしてリチャードさんは見られるんですか?」
言い方が気になったので、礼音は問いかける。
「私が出資者になっている法人は、頼めば見せてくれるからね。それに法人名だけのランキングなら機密性はない」
とリチャードは返答しならがスマホを操作した。
(珍しいな)
礼音がそう思うと、彼のスマホがすぐに震える。
「ああ、やはり見せてもいいようだ。見てみるかい?」
とリチャードに聞かれたので礼音はうなずく。
すると老人はスマホ画面を操作して、見せてくれた。
「ミカヅキオフィスは現在ランキングで世界3位だね」
「…………えっ?」
リチャードが何を言ったのかすぐに理解できなかったし、画面に表記されている「3位ミカヅキオフィス」も頭に入ってこない。
「3位? 世界で?」
礼音は自分で言っていることが信じられなかった。
「そうだよ。【ヌーカ】という希少な薬を持ち帰り、エヴァを助けてくれただろう?」
リチャードは微笑みながら理由をしゃべる。
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