第11話「ラープ大森林」

 礼音はあっさりと勤め先をクビになった。

 正社員ならいざ知らず、フリーターの立場はとても弱いのだといまさら思い知る。


「おかげで【アルカン】に専念できるんだけどな。貯金も9億円くらいあるし」


 とつぶやき自分に言い聞かせ、彼はラープ大森林にやってきた。

 都市リーメから行ける位置にあった場所よりも広大だとひと目でわかる。


「水と食料を買っておいて正解だったみたいだな」


 と言った。


 都市ラープでこの大森林に行くと漏らした際、日帰りじゃないなら水と食料の確保をすすめられた。


 大森林の中で水と食料を調達できる自信がなかった彼は素直に従ったのである。

 

 まず礼音はスキルを発動させながら、森林の入り口付近を歩き回った。


(どんな生き物がいるかわからんしな)


 シュオの言葉を疑うわけじゃないが、彼と自分の認識のズレを警戒する。


 ラープ大森林は入り口から背の高い木が並んでいて、太陽の光がさえぎられてうす暗い。


 そこで彼は都市ラープで買った【発光石】を使う。

 ランタンの光くらいには明るく一気に歩きやすくなる。


 彼が手にしているものはスキルの対象になるので、小動物や虫たちは彼に気づかず通りすぎていく。


「外れかと思ったけど、普通にかなり強くて便利なスキルだよな」


 と彼は感想を言う。

 

「うん?」


 金色に輝く鱗が数枚落ちていたので、拾って特上収納袋に入れる。


 彼は物品を鑑定する手段を持たないから、とりあえずめぼしいものがあれば都市まで持ち帰るつもりだ。


「おっ? 虫の死骸も入れてみるか。たしか薬の材料になったりするんだっけ」


 簡単な説明を思い出しながら彼は回収作業をおこなう。

 まっすぐ進んでいくと白い蛇に遭遇するが、向こうは気づかずに行ってしまった。


「あの蛇の鱗もあればいいんだが……」


 一応付近を探ってみたところ、抜け殻らしきものを手に入れる。

 

「売れたらいいんだがなあ」


 何が売り物になるかわからない。

 不安ではあるものの、同時に楽しみでもある。


 ある意味ギャンブルのような快感と言えるかもしれない。

 やはり都市ラープで買ったマントを利用して眠る。


「……キャンプってこんな感じなのかな」


 次の日、起きて礼音は言いながら朝ご飯をすませる。

 そして奥へを進んでいき、虫の死骸とはがれたらしい蛇の鱗を拾う。


 モンスターはあまり見かけないのはまだ奥に進んでいないからだろうか。

 そう疑問を浮かべつつ、礼音はふと足を止める。


 前方に木の葉が落ちているからだ。


「木の葉も素材になる可能性があるんだっけ」


 とりあえず特上収納袋に入れておく。

 周囲を見てときどきスキルを解除する。


 ずっと使い続けていて、おそろしいモンスターが出たとき使えないという事態は避けたい。


 奥に進んでいくと木の種類が変わったように感じられる。


「入り口付近よりもデカいし、葉の形も違う気がする。種類も違うのかな?」


 もちろん礼音に詳しいことがわかるはずもない。

 あの木の枝や葉っぱも拾おうと考え、彼はずんずん進んでいく。

 

「おや?」


 奥まで来たとき、正方形のような形をしたギザギザの青い葉が落ちているのを発見して拾う。


 同時にそのすぐそばに落ちていた赤い鳥の毛のようなものを回収する。


「さて、そろそろ帰るとするか」


 食料的に三泊も四泊もできない。

 都市リーメに戻ってシュオに見せようと彼は考え、戻り石を使った。

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