第10話「戻り石と収納袋」

「ついでに収納袋の購入もすすめたいかな。トレジャースネークを倒したあとで発見された財宝、特上収納袋なら全部入れて運べるよ」


 とシュオは話す。


「それは便利だと思いますけど、値段次第ですね」

 

 ない袖は振れないと思いながら礼音は答える。

 彼は金貨を持っているが、それよりも高いかもしれない。


「特上収納袋は金貨一枚。戻り石はひとつ大銀貨一枚だよ」


 とシュオは返事をした。


「……大銀貨って何枚で金貨一枚になるんですか?」


 相場がわからない礼音が聞く。

 高いのか安いのかすら知らないのだ。


「おっと、あなたは【ギースの民】だったか。大銀貨十枚で金貨一枚なんだ。だから金貨二枚出してくれたら、大銀貨九枚のおつりを返すことになる」


 シュオの説明に彼はうなずく。


(【ギースの民】ってのは地球人って意味かな?)


 と内心思う。


 こちらに【アルカン】という名前があるように、地球にも彼らなりの呼び方があるのだろう。


(金貨が100万円相当なら、大銀貨は10万ってことだろう。たぶん)


 という計算をした。


 高いことは高いのだが、多くの物資の持ち運びが楽になることと、移動時間の短縮ができることを考えれば、価値はあるだろう。

 

 彼は決断を下して、


「じゃあ特上収納袋と戻り石をください」


 と注文した。


「わかった。すこし待っててくれ」


 シュオはうなずいて奥に行って、白い袋と青い石を持って戻ってくる。


「これが特上収納袋とリーメの戻り石だよ。戻り石は一回使うと壊れる使い捨てタイプだから気をつけてくれ」


「わかりました」


 礼音は大銀貨九枚のおつりとアイテムを受け取った。

 さっそく残りの金貨を入れてみるが、スムーズに収納できた。


(これでちょっとは気持ちが楽になるな)


 と思う。


「それで、離れた場所ってどこなんですか?」


 そこで礼音は本来の目的に話題を戻す。


「馬車に乗って二日ほどの距離にある都市ラープの北にそびえる山だ。正確には山のふもとのラープ大森林なんだが」


 とシュオは伝える。


「また森林か」


 礼音はつぶやいたが、すぐに言った。


「行くだけ行ってみましょう。そこには何があるのですか?」


「百年樹と呼ばれる木が生えていたり、グレートボアと呼ばれる蛇が住んでいたりする。どちらも素材として人気があり、金貨を出す人たちがいるんだよ」


 彼の問いにシュオは答える。


「運次第だけど、トレジャースネークを倒せるレオン殿なら、損することはないはずだよ」


「なるほど」


 すくなくともトレジャースネークはグレートボアより強いのだろうと礼音は考えた。


 なら危険は減るし、金貨を得られるチャンスもあるのだから悪くはない。


「まずは行ってみます。一日だとどこまで行けますか?」


「都市ダーアだろうね。戻り石を売ってる都市だから、あなたも困らないだろう」


 次の礼音の疑問にもシュオは答えてくれる。


「ありがとうございます」


 礼音はお礼を言って、まずは都市ダーアを目指すことにした。

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