第7話「換金とその他手続き」
「では登録します」
と礼音は答えた。
「食べ終えてからでいいのでギルドに顔を出してくれないか? 【レンジャー】ライセンスの発行がある」
白髪頭の男性が話す。
「わかりました」
「では邪魔をした」
礼音が返事をすると彼らは下がっていく。
「……どれくらいの価値があるのかわかんないな」
と礼音は言う。
金貨と白金貨がどれくらいすごいのか、彼は知らなかった。
戻ってスマホで調べればわかるだろう。
何なら【アルカン】協会や異世界事務局に相談してもいい。
「宝くじに当たったとでも思うかな……」
と礼音は期待を抱く。
「換金できなきゃ意味ないし、一回日本に帰るか」
本当ならもうすこし【アルカン】にいるつもりだったが、大金を手にしたことで予定を変更する。
数十枚の金貨や白金貨を持ったままうろうろするのは不用心だと思うからだ。
いまもちらちらと彼のほうを見ている者が複数いるのを感じる。
「スキルも使ったほうがいいか」
礼音はふたつの革袋を手に取るとスキルを発動し、そのまま交易ギルドへと向かう。
「き、消えた!?」
「し、信じられん!?」
「いったいどんなスキルなんだ!?」
残された者たちは彼がいきなり消えたとしか思えず、驚愕して叫び声をあげる。
「……なるほど、やっぱり周囲にはそう見えるんだな」
声を聞いた礼音は自分の想像が間違ってなかったと判断した。
「さすが【宝蛇殺し】だな。すごいスキルを持っている」
と誰かが褒める。
交易ギルドに行ってスキルを解除し、【レンジャー】登録してライセンスカードを受け取った。
そのまま【ゲート】をくぐって彼は日本へと戻ってくる。
「【アルカン】から持ってきたアイテムを換金したいんですが」
立っている職員に聞く。
「それでしたら異世界事務局で対応を受け付けていますよ」
若い男性に場所を聞いて、礼音は礼を言って教わった場所に向かう。
渋谷駅から徒歩五、六分の位置に「異世界事務局 渋谷支部」は存在し、看板が出ている。
若い女性受付にさっきと同じ言葉をくり返す。
「はい。では最初に【ゲート】パスポートの提示をお願います」
礼音はまず【ゲート】パスポートを提示し、それからふたつの革袋をカウンターの上に乗せる。
「失礼します。これは!?」
若い女性は驚愕したものの、すぐに作業に戻った。
「【アルカン】の白金貨は一枚1億円なので、10億円。金貨は一枚で100万円なので50枚で5000万円となります」
と受付女性は話す。
「え、10億円!?」
「金貨は【アルカン】で使う機会は多いと言われていますが、換金なさいますか?」
驚く礼音にさらに彼女は質問する。
「いや、やめておきます」
と彼は答えた。
(運よくゲットできただけしな……また手に入るかわかんないし)
一度行っていきなり入手できたものの、ビキナーズラックだろう。
いくら礼音が楽観的だとしても、同じ展開が二度も期待できると思わない。
「換金は現金ですか? それとも口座振り込みですか?」
「口座振り込みでお願いします」
迷わず礼音が答えると、
「では手続きをお願いします」
と予想通りのことを言われる。
それがすんだあと、
「三日月さんですと異世界法人の設立をおススメします。いまなら税金がお得ですよ」
と案内された。
「法人を作るとどうなるんです?」
「いまですと法人税が1億円だけになります。設立しないなら、10億円に所得税と住民税がかかってしまいますので……」
簡単な説明だったが、礼音はすぐに決意する。
「作ります」
こうして彼は「三日月オフィス」を設立することになった。
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