第6話「反響」
礼音は都市リーメに戻り、交易ギルドに顔を出す。
「見つけた財宝について相談したいのですが」
「!?」
対応した若い男性職員は驚愕して引っ込み、白髪頭の男性を連れてくる。
「……チェックさせてもらおう」
と言って男性はメガネのようなものを取り出して調べていく。
「全部本物だが、これはどうしたのかね?」
と白髪頭の男性に聞かれたので、礼音は事情を話す。
「あなたの言うことが事実なら、おそらくトレジャースネークの仕業だろう」
「トレジャースネーク?」
知らない名前を礼音が反すうすると、彼はうなずいた。
「財宝を集める性質がある蛇型モンスターだ。一説によるとドラゴンを祖に持ちながら、劣化した種らしい。とにかくあなたが見つけた場所に調査隊を送ろう」
男性はそう言ってほかの職員に指示を出し、
「レオンだったな? すまないが連絡事項があると思うから、この都市にとどまってはもらえないか?」
と礼音に頼む。
「かまいませんが、のど乾いて腹もへっているので……」
礼音は困惑して答える。
彼としてはお手軽に報酬でももらって去りたかったのだ。
現状を簡単に伝えたのは飲食店に行きたいという意味である。
「ならギルド横の店に行くといい。そこならあなたが飲み食いする分は無料にするよう、ワシから店に話を通しておく」
「え、本当ですか?」
礼音は予想外の申し出に驚いた。
理由はさっぱり理解できないが、無料で飲み食いできるならそっちがいい。
「ではお言葉に甘えて」
礼音は言われた場所に移動し、パンと肉とお茶を注文する。
パンはコッペパンに見た目も味もそっくりだった。
肉は100グラムのものをじっくりミディアムで焼いたものだ。
「……塩コショウが欲しい気がする」
ただ何もかかっていないし、肉汁のうまみもないのですこし物足りない。
お茶はと言うとハーブか薬草系の風味が強く、のどの渇きをうるおすものとしては微妙だった。
水を頼んで飲んでみると、
「めっちゃ美味い!?」
その味のよさに驚愕する。
ただの水がこんなに美味とは信じられず、目を見開いた。
「【アルカン】の水は美味いって話題になってたな、そう言えば」
とつぶやく。
半信半疑だったのが、いまは疑って申し訳なかったという気持ちでいっぱいだ。
水を飲んで肉とパンを食べて人心地ついてゆっくりしていると、先ほどの白髪頭の男性が何人か武装した男性といっしょにやってくる。
「すまない。話をしたいので、そのまま聞いてもらえるだろうか」
立ったまま話しかけられたのを怪訝に思いながら礼音はうなずく。
「あなたが行った場所でトレジャースネークの死体が発見された。あなたが討伐したのだろう。まずはこれの討伐報酬を支払いたい」
「倒した覚えは……あっ」
礼音は否定しかけて、何かを踏んだ直後に叫びを聞いたことを思い出す。
「気づいてもらえたようで何よりだ。報酬は金貨五十枚となる」
「あ、はい」
金貨が入った革袋がテーブルの上に置かれる。
「次にトレジャースネークが集めた財宝だが、大陸ルールにのっとって五割があなたの取り分となり、これは白金貨十枚だ」
今度は白い袋がテーブルの上に置かれた。
「そしてあなたさえよければ【レンジャー】に登録しないか?」
白髪頭の男性は聞いてくる。
「【レンジャー】? 何ですか、それ?」
と礼音は質問を挟む。
「モンスターを倒したり、財宝を探したりする者だ。登録して公認【レンジャー】となれば、先ほどの財宝の取り分が七割にアップするメリットがある」
白髪頭の男性が説明する。
「それはすごい。何か義務はあるんですか?」
「ないぞ。国家と契約した場合は生じるが、するかどうかは自由だ」
礼音は返答に驚いた。
もちろん国家と契約するほうがメリットはあるかもしれないが。
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