傍氏オリジナル

〝呪い〟により死亡したクラスメートたち。

当時の二年四組ではオカルト的な話題が流行っていた頃、彼等は集団で、不可解な死に方をした。

そんな背景からその事件はいつしか

〝呪い〟と呼ばれた。

その事件での死亡者一覧の中には、かつて純粋に笑い合った四人の名前があった。

–– 吉井 朱音 涼音 蒼

四位路 翠 七詩乃 きお



––「蒼君!」

唐突に呼び止められ、驚く。

翠だ。

クスクスと悪戯な顔で笑う。

彼女の後ろでは、俺の相棒の朱音が声を殺して笑っている。

なんや、こいつら。

こちらも引きつる顔で笑顔を作る。

「おはようございますぅ」

俺が引きつった顔のまま挨拶すると二人は吹き出した。

ほんまになんなんや、こいつら。

特に朱音。

何もしてへんのになにわろとんねん。

学年一のイケメンと言われる朱音の顔はクシャクシャに笑顔を作っていた。


靴を履き替え、教室に着く。

そこはいつものように賑わっていた。

近くの席に挨拶を投げかけると同じように適当な挨拶が帰ってきた。

予鈴が鳴り、皆が急いで席に着く。

少しすると担任がドアを開けた。

「おはようございます。」

何人かが挨拶をする。

先生は適当に返しながら出席を取り始めた。


業間––

クラスでは、十数名が話に花を咲かせ、笑い合っていた。

だが、その中、とある女子グループでは不吉な笑いが生まれていた。

俺、朱音、翠も窓辺に集まり、駄弁っては笑い合っていた。

その時––

皆の視線が大きな声に向いた。

「なぁ、七詩乃ぉ?ノートみしてくんね?」

笑い声が一瞬にして消え去る。

クラスのトップ的女子、有村に名前を呼ばれ、小さく肩を震わせるのは幼馴染のきお。

有村とその取り巻きは怯えた彼女を見て汚く笑った。

「よかったな!有村に話しかけてもらえて。」

「私もノート見して〜!」

取り巻きも有村に便乗し、囃し立てる。

次の瞬間、有村はきおのノートを取り上げ、持っていたハサミで躊躇なく切り裂いた。


笑いが巻き起こる。

それはやはり汚い笑いだ。

気が済んだのか彼女らはノートだったものを蹴散らし、笑いながら教室を後にした。

....は?

脳が一気に動き出す。がもう遅い。

少し先には暗い表情のきおがいた。

きおは涙も流さずただ、宙を見ていた。

俺はきおに喋り掛けようとするが言葉が出ない。

それは横にいる二人も同じ様だった。


––放課後

決心がついた俺は、覚悟を決め、きおに近づいた。

なにを言われても良かった。

しかし、きおは「近付かないで。」

とだけいい、俺に背を向けた。

仕方がない。

幼馴染で居ながら、俺はきおを助けることが出来なかった。

全て俺が悪い。

一人残った空き地で宙を見つめた。




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