第12話 地雷客2-2

そうこうしているうちにホテルに着く。

車を降りて、軽く打ち合わせをしてながら部屋へ向かう。


部屋の前に着いたところでクララさんにラインを入れる。ほどなくして部屋のドアが開いた瞬間に井出店長が部屋に乗り込んだ。


いまさら四の五の言ってもしょうがないので後に続く・・・。


急な乱入者に客は面食らった様子。見る限りやばそうな感じではなさそうだ。


「え?何ですか?」

客が裏返った声をあげる。


井出店長が冷静に声をかける。

「いやあ、お客さんルールは守ってもらわないと困るんですよ。」

「は?何を言ってるんですか?警察呼びますよ。」


とぼけた返答をしているが、表情を見るになぜ踏み込まれたかはわかっているようだ。


「呼んでも構いませんよ。呼ばれて困るのはそっちですよね?」

「・・・」



「無理やり本番しましたよね?」

「いや、それは流れで・・・」


そこで後ろにいたクララさんが反論する。

「私はっきりやめてって何度も言いましたよ。押さえつけて無理やり入れられました。抵抗したら何かされそうだったし・・・」


「クララさんはそう言ってますが、反論はありますか?納得できないなら警察を呼んでも良いですよ。こちらとしてもお客さんに濡れ衣を着せたいわけではないですから。ただし、本当に無理やり行為に及んだなら警察が入ると刑事事件に発展する場合がありますのでそこはご了承ください。」


「しました・・・。」

客はあっさりと白状した。まあ、刑事事件になったら下手すれば色々失うしな・・・。


「素直に認めてもらって助かります。こちらも穏便に済ますことが出来ます。当店のホームページにも書いてありますが、本番強要は罰金100万円です。すぐにはご用意できないでしょうから、今日は身分証をコピーさせていただいて、念書を書いていただくという形になります。」


「100万円?そんな無茶苦茶な!ぼったくりじゃないですか!」

まあ、当然の反応だ。


ここで俺の出番だ。

「ぼったくり?お客さんわかってます?本番バレたら営業停止になることだってあるんですよ?そもそもあんたのやってることは強姦でしょうが!もういいっすよ、クララさん、警察に被害届出しましょうよ!」


もちろん打ち合わせ通りのセリフだ。

このセリフで客の顔が青ざめる。


「本当にすみません。二度としないので警察は勘弁してください・・・。」


ここで店長が優しい声で語りかける。

「お客さん、今回初めてみたいだし、反省してると思うから許してあげたいんだけど、ペナルティー全くなしって訳にはいかないんだよね・・・。女の子にも被害が及んでるしね。罰金は30万にしてあげるから、二度としないでね。クララちゃんもそれでOK?」

クララさんが黙って頷く。


「わかりました・・・。」


かくして免許証のコピーと念書を手にし、我々は帰路に着くことなった。


「クララさん大変だったね。怖くなかった?」

「大丈夫ですよ。店長と羽根田さんこそありがとうございました。本番自体、そこまで嫌じゃないんですけど、本番できるって噂がたったら面倒だから完全NGにしてるだけだし。ああいうのに限って内緒でやらせてあげたらネットで拡散するんですよね・・・。」


「こっちもそういう客は排除したいけど、電話じゃわからないからね・・・。」



デリヘルはホテルや自宅に派遣するので、本番云々の話はあとを絶たない。

多くのデリヘルでは客側が交渉するくらいだったら黙認していると思う。


ただ、今回の様に強要したり無理矢理行為に及ぼうとすると大変な目にあうので、男性諸君はくれぐれもマナーを守って遊んでいただきものだ。



※ちなみに今回の井出店長の対応はかなり易しい部類に入る。店舗型などでは100万円+顔写真が待合室に飾られるなんてお店もあります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る