第9話 問題児③

ホテルへ向かう途中、片桐さんからラインが来て、レイナ嬢に確認をとったら普通のマッサージしていないことが判明。


 ホテルについて、お客様への部屋へと向かう。ノックをすると30代と思しき男性が出てきた。

中に入るように促され、室内で返金と謝罪を行うことに。


「大変申し訳ありませんでした。こちら返金させていただきます。」

「何回かおたくを使ってるから、悪い店じゃないのは知ってるからまた使うけど、あの子はつけないでね。やる気ないし、時間稼ぎも酷かったから。」


すぐに返金対応したのが功を奏し、お客さんに怒られることはなかったが、レイナ嬢は案の定仕事も酷いようだ。


今回みたいにお客さんからクレームが直接入るならまだマシだ。気遣いないうちにネットの口コミで店の評判が下がってたら目も当てられない・・・。



ホテルの部屋を後にした俺は片桐さんに報告。時間稼ぎの件も伝えておいた。



その後、レイナ嬢には厳重注意がなされたらしい。



それからしばらくの間、眠り姫のヘルプに入る機会もなく、レイナ嬢のことは俺も忘れかけていた。


それから数週間後、眠り姫のヘルプに入った時に事件は起きた。


出勤して事務所に挨拶にいくと、まなつさんが片桐さんと話していた。日頃不機嫌な態度は勿論、疲れた素振りさえ見せないまなつさんが、かなり怖い顔をしている。


「普通に考えてありえないでしょ。あの子のせいで入れ込みが遅れて、お客さんに怒られるの私たちなんですけど。」


「すみません。今後は迷惑をかけないようにしますから・・・。」


どうやらレイナ嬢がやらかしたらしい。

寮を使っているキャストは、待機も寮でOKなのだが、レイナ嬢は待機時間に出かけていたらしい。


電話をしたら「すぐ戻ります」と言っていたので待っていたら30分後に戻ってきたらしく、そのせいで同じ車に同乗していたキャストの入れ込みが大幅に遅れてしまったようだ。


片桐さんが何とか宥めてその場は収まったが、他のキャストからもかなり苦情が出ているみたいで、その後はレイナ嬢に回す仕事は大幅に減る事態になってしまった。


店としては、客がつかなくなったら勝手に辞めるだろうという考えらしい。



それからまた数週間後、事件は起きた。発覚のきっかけはネットの匿名掲示板だった。


『眠り姫の嬢がドライバーとホテルに入っていくのをみた。』


風俗業界では男性スタッフが、キャストに手を出すのはご法度だ。どの店でもばれた場合は、解雇+罰金のペナルティが課される。


掲示板の書き込みを追って究明してみると、女の子はレイナ嬢。ドライバーはなんと向井さんだった。


社長と眠り姫の店長が向井さんを問い詰めると、観念して白状した。

どうやら付き合っているとかではなく、仕事がつかないレイナ嬢が、向井さんに割安でホテルに行くことを持ちかけたらしい。



向井さんは下心は勿論あったが、仕事が全くないレイナ嬢に同情した部分もあったようだ。


就業規則通りなら向井さんには解雇+100万円の罰金が言い渡されるところだったが、片桐さんが庇ってくれたおかげで解雇だけで済むことになった。元々真面目に働いていた人だったので、店も温情をかけたのと、レイナ嬢をクビにする大義名分ができたのも要因だろう(大きな理由もなくクビにすると紹介会社から敬遠されるのだ)。



こうして、眠り姫にも平穏が戻ったが、ドライバーが一人減った為、我々は忙しい日々を送ることになったのだが・・・。


レイナ嬢程ではないにしても、どこの店でも地雷嬢には頭を悩ませられるのだが、

地雷は嬢だけではない。地雷客というのも存在する。


それはまた次回に・・・。


つづく






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