第4話 デビュー戦③
スタートで躓いたものの、その後はトラブルもなく仕事が進む。
だが最後の最後、俺のシフト終わり、夜中の3時を少し回った時間にその時は来た。
俺の最後の仕事はすずめさんというキャストのキャッチ。
他でキャッチしたキャストを乗せた状態で、指定のラブホテルに行くと、すずめさんが待っていた。
「おつかれさまです。1万5千円ですね」
「おつかれさまです」
あいさつはするものの、乱暴にお金を渡してくる。
そして事務所に連絡をいれようとすると
「早く車を出して!」
かなりお怒りのようだ。
一応事務所に指示を仰ぐと、戻ってきてすずめさんの給料精算とのこと。
とりあえず事務所に戻る。事務所は5階建てのマンションの4階にあるので(キャストの待機場もある)、店長が事務所で清算するんだろうなと思い、マンションのエントランス前に車を停める。
「着きました。お疲れ様です」
てっきり降りるものと思って待っていると、
「違う!そこじゃない!」
いきなり怒鳴られた・・・。どうして良いかわからずおたおたしていると、
「あそこまで行って!」とすずめさんが駐車所の黒いセダンの方を指さす。
とりあえず言われたところに車をつけると、
「早く!」 また怒鳴られる。
「自家用車で出勤の人はドライバーさんが精算するんだよ」
と同乗のキャストさんが助け舟を出してくれた。
慌ててお金を数え、その日の給料を渡す。
「〇万□千円です」
そう言って渡すと、すごい形相で睨まれた・・・。
すずめさんは舌打ちをしつつ、ドアを乱暴に開けて帰っていった・・・。
あまりの剣幕に呆然とする俺。
去った後に同乗していたキャストの朱里さんが俺に声をかける。
「すずめさんは時間に厳しいの。シフトが3時までなんだけど、
3時を超えたらめちゃくちゃ不機嫌になるんだよね。普通はそうならないように事務所の方で調整するんだけどね・・・。で、精算の時に手間取ったのもあって怒ってたみたいね。新人さんだから今日は仕方ないんだけどね・・・。」
さらに朱里さんは続ける
「ただ、最後の精算の際に金額を言ったでしょ?あれはNG。私は気にしないけど、ほかの女の子に知られたくない人もいるからね。人気の子は妬まれることもあるし・・・。まあ、すずめさんは怖いけど根に持つようなタイプじゃないから次に気を付ければ大丈夫だと思うよ。」
そう言い残して朱里さんは車を降りて待機場へ戻っていった。
事務所に戻ると、朱里さんから事情を聞いたらしく、店長が謝ってきた。
「ごめん、ちゃんと説明してなかったね。今度から注意事項はちゃんと伝達するね。それにしても初日から色々あって疲れたでしょ?」
「初日ですからね。仕事がスムーズにできるように頑張ります」
「今後とも宜しくね。でもマナさんも朱里さんもほめてたよ。運転が丁寧で受け答えもしっかりしてるって。」
非常にありがたいお言葉をいただく。まあ、二人とも良い人そうだったもんな・・・。
そんなこんなで俺のデビュー戦は終了した。
それ以降はまあまあ問題なく仕事をこなせるようになり、色んなことが見えてくるようになるのだが、それはまた次回以降に・・・。
つづく
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