第3話 デビュー戦②

前回デリヘルの利用場所としてラブホテル・ビジネスなどの一般のホテルを挙げたが、次の入れ込み先は、そのどちらでもない。そう、自宅である。


最初のキャッチから思わぬトラブルに巻き込まれたが、気を取り直して次の入れ込み(送り)に行くことに・・・。まあ、トラブルとはいえ、時間も押してないので仕事には支障はない。


ラインに次の連絡が入る

『マナさんをそのまま入れ込みお願いします。ご自宅のお客様で住所は〇〇〇の××号室・・・』


本来はこんな丁寧な指示ではなく、キャスト名、場所、時間、金額だけを送ってくるのだが、この時は初日だったので店長も気を使ってくれたのだろう。



指示通りに、入れ込みに向かうことに・・・。場所は事務所のある地域からは車で30分くらいの場所だ。


社用車のナビに住所を入れる。ちなみにデリヘルのドライバーの殆どは自分の車を使って仕事をするのだが、シンデレラは原則として車は社用車だ。まあ、それもあってここに決めたのだが・・・。



ナビ通りに進み、到着するがナビの示す場所に指定のアパートはない。

あたりを見回すもそれらしい建物が見当たらない。



スマホの地図でも表示されないため、あたりをぐるぐる回ることに。

やばい、時間がどんどん過ぎる。入り組んだ場所のため、運転に神経を使わなければならない。



あせる俺・・・。

「乗ってるのは私だけだし、慌てなくて良いから、とりあえず車を止めて事務所に電話したら?」

マナさんが助け舟を出す。



事務所に電話。住所は間違っていない。

「とりあえず、お客様の電話番号教えるから、かけてみて。」



店長の指示通りに電話。お客さんがすかさず電話に出る。



「最近できたアパートだから、住所変わってるのかも。区画整理してたみたいだし。

今どの辺?」

「何か自販機が並んでるところです・・・」



結局アパートの前までお客さんが出てくることに・・・。

「ごめんねー。先に言っときゃ良かったね。」


そういって缶コーヒーまでいただいてしまった。良い人で良かった・・・。



終了まで待機となり、一息つく。



時間が終わり、マナさんをキャッチ。


「お客さん大丈夫でした?」

「全然怒ってなかったよ。凄い良い人だったから、色々サービスしといたよ。」


内容は敢えて聞かなかったが、おそらくここでは言えないサービスだろう。



入れ込み先が自宅だと、結構場所がわからなくて右往左往するのは、デリドラあるあるだったりする。このケースはキャストもお客さんも良い人だったので助かったが、こういう場合に露骨に不機嫌になったりするキャストもいる。



今思うと、デビュー戦ということで、店長も性格の良いマナさんを俺に当てたのだろう。マナさんを事務所に下ろした後も、他のキャストを乗せたが、その後はさほど問題なく仕事は進んでいった。


しかし、この日の最後の最後にキャストから雷を落とされる羽目になる。


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る