第2話 私を泥棒に仕立て上げたのは社長のせいよ

いつものように タダ働きの床磨きをしたあと

タイムカードを押して帰宅

今日も大丈夫 バレずに済んだ

安心感の裏で うごめく不安


そう 私は横領をしているの

二重帳簿を作成して 会社の利益をこっそり

いやごっそり ふところに入れている最中

マルチ商法の知り合いから仕入れた自前の洗剤で

タダ働きの床磨きをして

会社の立場を考える いい人の演技をして

社長の機嫌を取り 目くらましをしていたの


確かに私のしていることは れっきとした犯罪

しかし 原因は社長にこそあるのよ






常識外れのバカ安い給料で 人をこき使い

もっと早くとせかし 短時間で多量の仕事を押し付け

そのくせ小言ばかりで ご苦労さんの一言すらない

経理に疎いマヌケた社長の弱点を突いて

横領をし始めて三年目


休日はピンクのジャケットを着て

ひとり隠れ家レストランフルコース

この日ばかりは 即席リッチガール


こんな生活 いつまで続くのだろう?

いつか暴露することは うすうすわかっている

ああ この頃は肌もくすみ しわも増える一方よ

でも横領をしていなかった 今から思えば

まっさらだった 三年前には戻れない

嗚呼 神様ヘルプ



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る