ここからが本編。
第1話
『近付いて来んなよ。キモいな。』
『臭いんだよ。マジで。』
『ーー変なの居るし、あっち行こ。』
『これだから幻馬は……』
何百、何千と聞いた自分を罵倒する台詞。
もはや、罵倒とすら認識することは無くなった。
今ではどんな台詞を聞いても心が痛むことは無くなったが、いつから俺は嫌われて邪魔者扱いされるようになったのだろうかーー
春の暖かい日差しも弱まり、少しずつ日が傾いて来た春の中旬。自転車を漕いでいるというのにバイクヘルメットを被りながら転車を漕ぐ彼は、何度考えたから分からないそのことを内心諦めながらも、線路沿いの道を自転車を漕ぎながらそのことについて頭を回転させる。
彼が通っているのは、地元から少し離れた阪歩高校。県内でも上位に入るその高校は彼の家から自転車で四十分、電車で二十分位で着く。しかし、彼は電車を使うことなく自転車で往復一日一時間二十分近く掛けて学校に通う。彼が電車を使わないのは、初対面だというのに駅に足を踏み入れようとするだけで周りから歪な目を向けられるからであった。
幻馬は七十億を超える人類の中で、物凄く見た目が悪いなどという訳でもないし、彼自身そうは思っていない。むしろ、ドラマなどで売れている俳優を見て、自分の方が格好いいと時々彼自身も思う彼自身の容姿は非常に整っている。
それに嫌われていた彼は友達が出来る訳もなく、勉強しかすることが無かったので、友達と遊ぶような機会が無かった彼は勉強を幼い頃から続けていたので、学年でも各教科一位を独占する程非常に頭が良い。
更に、彼自身友達を作ろうと球技や陸上などの運動を毎日欠かさず非常にキツい内容で行っているので、どの運動も恐ろしい程出来る。最近は友達を作るのを諦めた為、幾らか運動する内容は軽くなったがそれでも学年でもトップクラスの運動能力を持っている。
そんな彼はーーモテる筈だった。
しかし、彼が幼稚園の帰り道口に含んでしまった木の実のせいで、杞憂なことが何も無い筈であった彼の人生の路線が折れ曲がる。
その木の実には所有していると、#家族以外の人類から嫌われる__・__#という効果があった。つまり、彼が幾ら努力をしたところで彼が木の実を口に含んだ時点で、彼は初対面であれ仲良くしようとも、嫌われる運命にあった。
何をしても嫌われるーー
初対面でさえ、あからさまに嫌な態度をとられるーー
そんな彼の心の唯一の支えは、彼のことを嫌わない唯一の人類の家族だった。彼の家族は、単身赴任で出張気味のこともありあまり家に居ない彼のお父さんの拓磨、嫌われ始めた彼を幼い頃からずっと支えていた母である夏海に、三歳歳下の幻馬に良く懐いている彼の妹の花恋の三人が居た。
本来なら壊れている筈の彼の心。
彼の心は、何とか家族の存在があって成り立っていた。
そんな彼の心は、いつしか家族以外には何も感じないようになっていた。
「……まぁ、今さら友達を作ることなんて考えなくていいか。家に帰れば母さんが居て、花恋も居るし。……早く会いたいなぁ~。」
そう言って、彼は自転車を漕ぐ足に力を入れて急いで家へ向かった。
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