第14話 ブレンダ視点
今日もクレイン様の邸で美味しいワインを頂いている。
私の生家の伯爵家はウィルクス公爵様のように資産家ではないから、クレイン様のお父様に父がお金を借りに行ったら、ちょうどダンスの講師を探しているところで、私が行くことになった。
そして、クレイン様の婚約者にダンスを教えることになったけど、こんな小娘に教える必要があるのか、と不愉快で堪らなかった。
学院時代からクレイン様はいつも第2王子と一緒にいて、それに加えあの容姿に次期公爵様だから、皆の憧れの的だった。
第2王子の取り巻きだけでなく、クレイン様を狙っていた令嬢も多かった。
私もその一人だった。
しかし、クレイン様が誰とも婚約しなかったのは、あの小娘のせいだった。
クレイン様のお父様がエステルを結婚相手に選んでいたために、エステルが12歳になるまで待っていたのだ。
この国では、12歳にならないと正式な婚約は出来ないから!
そして、本当に12歳のエステルと20歳のクレイン様は婚約した。
ダンスの講師に行くがエステルは鈍くさい。
元々教える気はあまりなかったから、もう初日で私は諦めた。
それよりも、使用人に嫌われているエステルに笑いが出そうだった。
執事のチャーリーにそれとなく聞くと、親のいない元子爵令嬢に仕えるのが堪らなく嫌だったらしい。
その反動か、伯爵令嬢の私にはとても丁寧だった。
クレイン様のお父様が他界された時はクレイン様はお帰りになったけど、何だか私を覚えてなかった。
学院時代には第2王子の取り巻き達と一緒に食事をしたりしていたのに…。
その日も私ではなく、エステルとウィルクス公爵邸に泊まることになり、私はクレイン様の邸に帰らされることになった。
あの小娘の何がいいのか。
「ブレンダは邸に泊めるから、もてなしてやれ。俺はエステルとウィルクス邸に泊まる。では、急いでいるから、後は頼むぞ」
「クレイン様…」
と、クレイン様の腕に憂いを帯びた目で触れるように乗せると全く反応はなく、では、と私を見ずにさっさとエステルの元に走り去った。
クレイン様の邸に帰り、葬儀が終わるまでと思ったが、執事のチャーリーはエステルのことを、帰って来なくていいのに、とぼやいていた。
「ブレンダ様はいつまで滞在になりますか?」
「クレイン様に邸の滞在を許可されてますので…」
いつまでにしようかしら、と思うとそこで勘違いが起きた。
「ではずっといて下さるんですね!そういうことでしたか!御者からもブレンダ様をもてなしてやれ、と伝言がありましたし、伯爵令嬢ならクレイン様と釣り合いますよ!」
ラッキーーーーー!!
と心の中でガッツポーズをした。
こんな勘違いがある!?
チャーリーがお馬鹿さんで良かった!
いや、私に惚れているのかも!
こいつを従わらせれば、クレイン様の邸で私は安泰だわ!
実家よりも良い暮らしも出来る!
私が愚鈍なエステルよりも立派に邸を治めていると知ればクレイン様もエステルよりきっと私を選ぶわ!
それには、チャーリーが決して私を裏切らないようにしなくては!
そのまま、チャーリーに口付けをすると、チャーリーは拒むことなく受け入れた。
「いずれあなたに閨の教育をお願いしようかしら…」
「光栄です…」
これでチャーリーは私の手下のように動いていた。
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