第13話 友人です!

「あの…レーヴィ様…」

「はい、なんでしょうか」


あなたは誰ですか!?と聞きたい!

この状況は何か変ですよ!?

レーヴィ様に抱えられたままそう思う。

そして…。


「と、とりあえず降ろして下さい!」

「お部屋まで連れて行きます!」

「部屋は通り過ぎてます!!」


食堂から私を抱え飛び出したから、部屋を知っているのかと思いきや、全く邸を知りませんよね!?

部屋も知らないのに二階まで物凄い勢いで駆け上がりましたよね!?


「失礼致しました!」


降ろしてくれないまま、私の案内でやっと部屋に着いたが、やはり思うのは、誰ですかー!?…です。


ベッドに降ろされて、思わず距離を取ろうと後ろにずりずりと下がってしまった。


「レーヴィ様…どなたですか!」

「……ジャンさんの友人です」


えぇ!?ジャンはもう40歳前後ですよね!?

レーヴィ様は20歳くらいに見えますよ?


しかも、ジャンがレーヴィ様を様付けしてましたよ!


「嘘ですよね!?」

「そんなことよりエステル様!」


そんなこと!?

そんなことですか!?


「あの食事は何ですか!?」

「あれは…」

「御者も嫌がらせをしているし、邸の執事は迎えに来ない、とどめにはあの態度は何ですか?」


初対面のこの人に邸のことなんか話せない!

というか…レーヴィ様は何者ですか!?

そして、御者の嫌がらせとは何ですか!?


「…御者の嫌がらせ!?」

「尋問致したところ、エステル様を驚かせようとちょっとした嫌がらせで馬車の扉の鍵を閉めなかったそうです。わざと扉が開くように、馬車も雑に走らせた…と白状しました。現在は傷害諸々で捕らえています」


私はそこまで嫌われていたなんて。

しかも、私の運動音痴を舐めてましたね!


だからといって、馬車から落ちるなんて…一歩間違えればお父様達のところに行くところでしたよ!


…そして!


「レーヴィ様はどなたですか!?」

「ジャンさんの友人です」


それはさっき聞きました!


御者を捕らえましたって、そっち方面のお仕事ですか!?

何で私のところに!?


そして、ジャンの友人だとしか言わないレーヴィ様とムムッと向き合っていると、レーヴィ様の友人らしいジャンがトレイに昼食を載せてやって来た。


「お嬢様、急なことでしたので有り合わせのサンドイッチですが、お召し上がり下さい」


出されたサンドイッチは卵にローストビーフにと美味しそうに見えた。


「さぁ、お嬢様。お召し上がり下さい」


温かい紅茶も淹れてくれ、これが執事の姿だ!と思うけど目の前の疑問は尽きない。


「ジャン!レーヴィ様とご友人なの?」


一瞬ジャンの肩が上がったのを、見てしまった。

そして、いつも通りの執事のすました顔で言う。


「はい、仲の良い友人です」

「いつからこんな若人と?」

「私はまだ39歳です!とにかく、お召し上がり下さい!」


ジャンに言われるがままにサンドイッチを噛るがジィーと二人を見ると二人には距離があり、本当に友人なの?って雰囲気だ。


「離れて座っているけど、本当に二人は友人なの?」

「男同士が恋人のようにくっついていたら気持ち悪いです!」


ジャンは力いっぱいそう言った。


二人に見守られながら、サンドイッチを全て食べ終わると、ジャンが改めてレーヴィ様を紹介してきた。


「私の友人のレーヴィ様です」


だから何故様付け!?


「しばらくこの街にいるそうで、エステル様の邸に逗留させて下さい」


もう居候はいらないんだけど。


「クレイン様の許可は?ウィルクス公爵邸ではダメなの?」

「クレイン様の許可はありますし、ウィルクス公爵邸は現在改装中ですので」

「…わかりました」


クレイン様も帰ってないのに居候ばかり増えてどうするんですか。


「それと、私が毎日こちらの邸に通うことにします。ウィルクス公爵邸が改装中ですので、ずっとはいられませんが…」

「本当に!?ジャンが来てくれたら嬉しいわ」


レーヴィ様のことはとりあえず置いといて、ジャンが通ってでも来てくれることは嬉しい!


少しこの邸に光が見えた気がした。






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