第15話 私が賄います!
「ジャン、皆に茶葉を贈ってくれてありがとう」
「はい、お嬢様」
ベッドでシーツを膝にかけて座る私に、ジャンは部屋の花瓶に花を活けながらそう話していた。
「レーヴィ様は?よく姿が見えないけれど…」
「今はブレンダ様とお茶をしています」
最近ブレンダ様と何だかよくお茶をしている。
ブレンダ様の外見が綺麗だからかしら。
一体レーヴィ様は何をしに来たのでしょうか。
「ジャン、お花は終わった?そろそろ出掛けたいんだけど…」
「はい、ご一緒しますね」
捻挫も大分良くなり、今日はジャンと銀行へと行くことにした。
馬車は正直乗りたくないけど、クレイン様の邸の馬車じゃなくてウィルクス公爵邸の馬車だから、あんな事故にはならないだろうと、ジャンと乗り込んだ。
ジャンもしっかり扉を確認していた。
銀行に着くと、個室に案内されて私の口座の履歴を確認した。
やはり、私の口座にクレイン様から毎月振り込まれており、その私の口座から邸の管理はしっかり賄われていた。
「毎月クレイン様の邸の運営費はここからで間違いないですね?」
銀行員にそう確認した。
「はい、一度も変えたことはございません」
「では、もう一つ口座を作って下さい。次からは私の新しい口座にクレイン様からのお金を振り込んで下さいね」
クレイン様のお金で贅沢なんてさせません!
クレイン様のお金と思って好き勝手されるなら、全部私のお金で賄うわ。
それなら、私が口出ししても文句はないはずですよね!
クレイン様には嫌われるかもしれないけど、もう手紙も来ないのだから、今頃婚約破棄を考えているかもしれないし、そう思うと益々クレイン様のお金なんて使えませんからね。
だからといって、失礼な食事を出したりはしませんからね!
私はブレンダ様と違って無礼者ではありませんから!
そして、今夜も私には食事の種類は少ない。
ブレンダ様とレーヴィ様は隣同士に座り、明らかに食事が違う。
今夜はジャンがいないからか、あからさまに違う食事を出してきた。
「チャーリー、私の食事はこれなの?」
「何か不満でも?」
前菜がサラダだけで、ブレンダ様とレーヴィ様にはハムなんかが載っているのに!
「チャーリー、きちんと仕事をしてちょうだい」
「元子爵令嬢にはわかりませんでしょうが、仕事は滞りなくやってます」
「邸の運営費は私が賄うことにしたのよ。きちんとしてちょうだい」
「何をバカなことを…」
チャーリーは私にバカなこと、と言って見下していた。
「エステル、執事を困らせるなんてみっともないわよ。食べたらすぐに下がりなさい」
「元子爵令嬢ごときが私の仕事に口を出さないで頂きたい」
「なら、結構よ!」
私にはブレンダ様よりもランク下と言わんばかりの食事を食べて、さっさと部屋に帰った。
レーヴィ様はブレンダ様とワインを飲んでいるし、何がしたいのかわからない。
こちらを鋭い目で見ているが、何も言わなかった。
そして、誰も私が運営費を賄うと信じなかった。
部屋に帰り、もう便りのないクレイン様に手紙を書こうとしたが、何度も書き直し、紙を無駄にした。
机の横のゴミ箱にはぐしゃぐしゃの便箋で溢れるほどだった。
そして、結局手紙は書けず、そのまま眠ってしまっていた。
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