第7話 二人でお別れを
「エステル、ブレンダを邸に連れて帰るように伝えて来た。」
「ありがとうございます」
これでブレンダ様もごゆっくりできるはず。
クレイン様、ありがとうございます。
そう思うが、クレイン様は気だるそうに戻り、私の隣に座った。
「食べないのか?」
「クレイン様とご一緒しようと思って…」
「待っていてくれたのか!?」
…ん?…今声に力が入ったような。
クレイン様の態度と視線にちょいちょい違和感はあるけど、気にしないことにしよう。
見て見ぬふりも大事ですよね。
気のせいかもしれないし。
「ジャン、クレイン様にお茶をお願いします」
「畏まりました」
ジャンが執事だと安心するわ。
私とクレイン様の邸の執事は私を認めていないみたいで、返事をするのもいちいち少しの間があるものね。
しかし、距離が近くないですか?
向かいのソファーも空いてますよ。
そう思っているとクレイン様は向かいに並べられたサンドウィッチを手前に寄せている。
こっちのソファーに座りたかったのだろうか。
ジャンは、少し目を大きくしてその様子を見ている。
さすが有能執事です。
クレイン様の摩訶不思議な様子に態度に出ませんね。
私も、密かに見習います。
「…クレイン様、私は向かいに移りますね」
「たまには隣もいいだろう」
「…そうですか」
たまには…って、たまにしかお会いしませんが。
年に1、2回しかお会いしませんよね。
「…エステル、少し痩せたのではないか?」
まぁ、私達の邸では私は意地悪をされてますからね。
食事も少ないし、なんといいますか満足に食べられません。
お義父様のいるウィルクス公爵邸ではきちんとした昼食に晩餐が出ますから、それが救いでしたよ。
図らずもお義父様のお見舞いに通っていたおかげでウィルクス公爵邸で昼食や晩餐を頂きましたから。
おかげで飢えることにはなりませんでした。
「クレイン様…少し休んだら二人でお義父様の所に行きましょうね」
「あぁ、二人だけで行こう」
クレイン様は私の髪をサワサワと絡めるように撫でてきていた。
こんな時ですが、ちょっと意識してしまいます。
そして、クレイン様と二人で眠りについたお義父様とお別れをしました。
「…クレイン様、お義父様は最後はゆっくり目を閉じました…」
「エステルが側にいてくれたおかげだ…」
クレイン様にそっと肩を抱かれるように手を回されると少しでも私は役に立ったのかと思い、労ってくれたとまた涙が頬を伝っていった。
そして、私がもっと年上ならお義父様と本当の家族になれたのにと、申し訳ない気持ちになった。
「クレイン様…私、早く大人になります」
「…父上もエステルがお気に入りだった。看取ってくれてありがとう」
そして翌日にはお義父様の葬儀が行われ、全てが終わった後、クレイン様はまた急いで隣国に帰って行った。
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