第2話 婚約者は続行で!
1ヶ月後━━━━。
お見送りに行くと、すでにクレイン様は玄関におられた。
銀髪がキラキラ光って麗しいと言いたいけど、残念ながら今日は雨だ。
素敵な銀髪は太陽に反射されることはない。
「クレイン様、お気をつけて下さい」
「エステルも元気で…それとこれを…」
クレイン様は私に贈り物を準備してくれていた。
私も慌てて、クレイン様に買った贈り物を出した。
「私もクレイン様に贈り物を準備したんです!ハンカチですけど…」
受け取ってくれなかったら、どうしようと思いながら、両手を突き出すように出した。
「ありがとう、エステル。手紙も出しますよ」
「私も出します!」
身長差は何十センチ?と思いながら、見上げると、クレイン様はフッと笑っていた。
頭を撫でられ、ちょっとポッとしてしまう。
そして、クレイン様は馬車に乗り、行ってしまった。
それから、クレイン様とは2~3ヶ月に一度は手紙のやり取りをし、少なからず縁は切れなかった。
クレイン様から頂いた贈り物は銀細工の蝶の髪飾りで、結構気に入っている。
髪飾りをつけ、ニンマリと鏡を見ると似合っていると思いたい。
そして、私が15歳の時にお父様は馬車の事故で他界した。
クレイン様はまだ仕事も兼ねた留学中だった。
お父様の葬儀にはクレイン様は間に合わなかったけど、何日か遅れてでも来てくれた。
「クレイン様…来て下さったんですね」
「…エステル、遅くなって悪かった」
思わず、クレイン様に駆け寄り抱きついてしまった。
そんな私をクレイン様はそっと頭を撫でてくれた。
ほとんど荷物も持たずやって来たクレイン様は急いで駆けつけて来てくれたとわかる。
そして、クレイン様は私が心配だと今日は私の邸に泊まってくれるらしい。
「クレイン様、来て下さってありがとうございます」
「葬儀に間に合わず、すまなかった」
「急な事故でしたから…」
サロンでお茶を出していると、クレイン様はゆっくり飲んでくれた。
「…アップルティーか?」
「は、はい」
初めて会った時にアップルティーの話をして、飲んだことを覚えていてくれたのだろうか、とちょっと思ってしまった。
そして、目を細めて私を見るクレイン様は、やはり見目麗しい。
本当にこれが私の婚約者でいいのかしら。
「エステル…この邸はどうなる?次の爵位を継ぐ者が来たらエステルは出ないと行けないのか?もしそうなら…」
「あの…ウィルクス公爵様が私達の将来の邸に住めば良いと言って下さったのですが…」
「は?」
クレイン様は呆気にとられてしまった。
「…聞いてませんか?」
「どこにも寄らずに来たからな」
初耳ですか。
クレイン様…今、勝手に話を進めやがって、とか思ってますか。
そんな顔ですよね!
「あの…もう父もいませんし、婚約を破棄して下さっても構いませんよ。私が17歳や18歳になるのを待っていてはクレイン様の婚期が過ぎてしまいますよ」
「…少し大きくなったか?」
「はい、もう15歳です」
私は成長期ですからね。
でも、クレイン様も心なしか少し逞しくなったような…。
クレイン様もまさかの成長期!?
「…あとたった2~3年だ。気にすることはない。このまま婚約者としていよう」
「はい…」
クレイン様の言葉通り婚約者は続行のままで、私はクレイン様と将来住む邸に引っ越すことになった。
ウィルクス公爵様も以前と変わらず私を気にかけて下さり、第2の優しいお父様のようでした。
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