第3話 まだ仕事ですか


私が16歳を過ぎてもクレイン様は相変わらず、隣国に仕事を兼ねた留学中でした。


しかし、年に1、2回は帰って来て下さるようになり、帰って来た日は必ず私達の将来の邸に泊まって下さっていた。


そして、大量のお土産を抱えて帰ってくる。


「クレイン様、いつもこんなにいいのですか?」

「いつもいなくてすまないからな」


ドレスに靴に宝石と毎回沢山買って下さる。

そして、毎月届く花束。

月の始めには花束を届けるように手配でもしているんでしょうか。


「来年には必ず帰国するから、もう少し待っていてくれるか?」

「はい、ずっと待ってますけど…お仕事?が忙しいのですか?」

「そ、そうだな…」


何ですか?

その含みのある返事は。

お仕事を兼ねた留学ではないのですか?


そして、いつも通り一泊してクレイン様は隣国に帰って行った。


邸に残ったのは私と、この邸の使用人だけ。

元々いたセルウェイ子爵邸の使用人は次の子爵が全て召し抱えるというから、この邸の使用人は皆新しい使用人ばかり。


そして、まだデビュダントも結婚もしていない私を使用人達は女主人と認めなかった。


お父様が他界し、子爵令嬢の肩書きも怪しく、クレイン様の婚約者というだけの小娘に使用人達は仕えることに不満があったのだろう。


そして、クレイン様がお帰りになるとまたいつものように陰口を叩かれる。


「ずっと帰って来ないのは、女がいるのよ」

「あんな小娘が相手にされる訳がないわ。」

「あれでいいなら私だっていけるわ」


まぁ、小娘なのは否定出来ない。

私だって、もしかしたら隣国に好い人がいるのでは?とか思ったりもする。


それくらいクレイン様は周りからモテそうだし、いつまでも帰らなさすぎる。


お義父様のウィルクス公爵様にご相談しようと思ったけど、お義父様は今は病床だ。

ご心配をかけたくない。


昨日もクレイン様とこの邸に来る前に二人でお見舞いをした。

クレイン様と二人で行くと、お義父様は元気が出るように笑顔を見せてくれる。


そして、クレイン様がいない間もお義父様のお見舞いに毎日のように通っていた。





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