冒頭から読まれる作品と小説『ある愛の詩』


【小説を書くことについて大事なひとつ】


 カクヨムで小説を書いてらっしゃる皆さま、冒頭、書き始めが大事なんてのは、もう、誰でも耳タコで聞くことですよね。


 ともかく、書き始めのフック !

 このフックがないと、次が読まれないなんて、よく思います。

 とくにライトノベルではそうかもしれないです。


 センスのいい文章、あるいは、大きな事件、突発的な恐怖、気になる会話ではじめるなんてのは冒頭の常套手段。



 実は——、

 無雲さんが書いてらしたエッセイを読んで、思いだしたんです。


 古い映画なんですが、小説もベストセラーになった作品です。

 1970年に、当時の世界の若者たちを虜にした映画があって、日本でも大ヒットしました。


『ラブストーリー ある愛の詩』です。



 この作品、王道中の王道恋愛作品です。

 ちょっとしたネタばれですが。金持ち御曹司と貧しい苦学生の恋物語、その上、女性の病気で別れると、最後は涙ぶっわーのストーリー。


 暗い映画かもって思うでしょうが、それが違うんです。

 なにが違うって、セリフがいい。

 冒頭のフックがいい。しびれます。グッと心を掴まれてしまいます。


『ある愛の詩』の冒頭。


「どう言ったらいいのだろう。

 25歳の若さで死んでしまった人のことを。

 彼女が愛していたもの、それはモーツァルトとバッハ、そしてビートルズ。

 それに僕」


 この「どう言ったらいいのだろう」

 という1行目で、なに?と見事に人をひっかからせ、


 次に、「25歳の若さで……」と続く一文で転換させ、しかし更に、この次の一節を書いた作者のセンス。鳥肌ものです。


「モーツァルトにバッハ」、クラッシックが好きなお堅い音楽関係の女かと思わせといての、当時は、まだ古典じゃない現役の「ビートルズ」を入れ込んでます。


 最後に、「僕」って、

 なになになに!

 この巧みな修辞法。


 いったいどんな女だ?って、もうね、いわゆる言うところのフックが効きまくっています。こんなセンスのいい冒頭を書きたい。ほんと、書きたいです。




 物語自体は昔からある王道ストーリーで、なんのヒネリもない。


 ハーバード大学のエリート学生でアイスホッケーのスター選手、その上、由緒ある家生まれであるオリバーと移民の貧しい音楽科の学生ジェニー。このふたりの恋物語です。


 オリバーの父親は家柄が違うと、この結婚に大反対と、ここにも予定調和的な内容がてんこ盛り。その反対を押し切って結婚するふたり。しかし、幸せもつかの間、妻となったジェニーは白血病になります。短い恋の物語は終わりを告げるしかなかったのです。


【序】 恋に落ちる。

【破】 結婚する。

【急】 病気で別離。

 

 感涙。


 こう書くと、ほんと軽い。

 あまりに典型的で、こっちが恥ずかしくなるほどの王道ストーリーです。


 いわば定番の王子様と貧しい家の娘という古くからあるネタを、現代的に翻訳したストーリーです。


 だが、このありふれた物語が陳腐ではない。せつなく読む人の心を打つ。

 つまり、小説が2100万部も世界で売れた理由です。

 映画も世界中で大ヒットしました。


 その理由はなんでしょうか?




 しばらく、黙考してしまった。

 座禅でも組んで滝のまえで考えたいなんて思ってしまった。

 そして、思ったのです。


 綺羅星のようにきらめく『言葉』の数々が、その理由なんだと。

 冒頭の文章にもあるように、ウィットに飛んだセリフや文章が多いのです。


 例えば、ラドクリフ大学の図書館でふたりが出会うシーン。女が言います。


「あなたはバカな金持ちでしょ」

「実はね、僕は貧しいけど賢い男なんだ」

「私も貧しくて賢いのよ」

「どこが君は賢いんだ」

「あなたとお茶を飲まないから」

「君をお茶になんか誘わないけどね」

「だから、あなたはバカなのよ」


 いかがでしょうか?

 この会話の流れ。

 いいですよね。さすが、2100万部世界で売れた本です。

 2100万部って、つまり、もし本代が500円として、1割の印税だとしても、50億円を超える収入のはず。ワオ!

 映画の原作料を考えれば、実際はもっと多いはずです。この本一作で生涯遊んで暮らせそう。


 ま、ま、ま。


 つまり、わたしの場合、なにが書きたいかというと、完結したばかりの作品です。

 お読みくださると嬉しいです。

 中華風異世界の恋愛ファンタジーです。


 冒頭を少しだけひねってみました。こんな書き出しはどうでしょうか。


『【完結】紫龍と姫と、天界の神々〜魔性の放浪楽士と王女の恋物語〜』

 https://kakuyomu.jp/works/16816700429630458363


 完結後、いろいろご意見をいただいて、嬉しかったです。天界に向かう前など、だいぶ書き足したりしました。

 本当にありがとうございます。


 もう一つ、主人公たちの会話に神経を使った作品が下記になります。


『【完結】ヴィトセルクの男〜血に魅せられた夜のイケメンたち〜』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860301222497


 ・・・というわけなんです。


 すみません、宣伝しながら、脱力しています。

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