第9話 マスゴミ
コロナのパンデミックの報道も政府の都合の良いことや、
東京都の都合の良いこと、大阪府の都合の良いことばかりを
報道機関が放送することで、視聴者は明らかに辟易としてきている。
それで最近では放送局や新聞・雑誌などのマスコミ媒体は
「マスゴミ」と揶揄されている。
コロナの時代になる前から、徐々にメディアによる世論操作に視聴者は気付き、
マスゴミという言葉は市民権を持ち始めていた。
コロナ大戦中、吉本大阪府知事、橋口元大阪府知事ばかりを
ワイドショーに出演させコロナと闘うヒーローのように見せかけることに
国民は、心からヘドが出る思いになっている。
要は、情報操作されることへの危機感が表出し始めたということだろう。
可愛そうな春は、放送局によるヤラセ番組のせいで
自ら命を絶たねばならなかったのだ。
春がこの世に生まれてくる時には春の父親は、
春の母と春の許から去っていたので、彼女は自分の父親の姿を見たこともないし、
当然ことながら父からの愛情を受けたこともない。
父に会うこともなく生まれてくる娘を不憫に思い春の母親は、
「春の季節のように、温かい陽光に包まれながら、
柔らかで優しい人々に囲まれて、すくすくと育って欲しい」という願いを込めて
娘に名前をつけたのだった。
それなのにメディアを介して増幅された、
人間だけでなくいかなる生物にも備わっている
(己自身が生存するためにスケープゴートを見つけ出し、
その生贄に攻撃を与えることで自分が他者からの刃を受けないようにする)
というなんとも醜い感情によって、
春は自分自身の心臓に刃を突き立てざるを得ない状況に
追い詰められたのだった。
春の母、柳瀬久美子は、20代の頃から女子プロゴルファーとしての賞金と
アマチュアゴルファーに教えるレッスン代を生業にして、
女手一つで春をここまで育ててきた。
春は生まれてきたときから、文字通り珠のように可愛らしく、
久美子の自慢の一人娘だった。
日本全国で開催されるLPGAのゴルフツアーに参戦するときは、
久美子は決まって春を連れて開催コースを回っていた。
どのコースに行っても春は大人気で、
久美子の女子ゴルファー仲間からいつも可愛がられ
試合に出る前は、どの選手もクラブハウスからコースに出るスポットで、
春とハイタッチすることでリラックスしてコースに出ることが出来た。
しかし、中にはハイタッチを、つぶらな瞳で可愛らしく求める春に、
目もくれずにプイッとしてコースに出ていく勝ち気な選手もいた。
ハイタッチを拒否した選手は試合に集中するために
ハイタッチをしないという選択をしただけなので悪気はなかったのだが、
ハイタッチを断られた春にとっては、
「なぜ、あのお姉さんはハルとハイタッチしてくれないのかなあ。
ハルのこと嫌いなんだなきっと。」と深い失望に陥るのだった。
まだ2,3歳の頃の春にはハイタッチを拒否した選手が想像する以上の虚無感を、
春は感じていたのだ。
その寂しそうな春の表情を見留た久美子は、
生まれたときから父親に捨てられたていた春は思った以上に
ナイーブな性格になってしまってるのかもしれないと、
毎回心配な気分になった。
久美子の女子プロゴルファーとしての成績は波があり、
アップダウンが激しい選手だった。
40歳を越えてからはトーナメントに出る機会も徐々に減っていき、
代わりに娘の春がこれからブレイクする若手美女ゴルファーとして
メディアの露出が増えてきていた。
ロハスハウスに春が出演すると、
ゴルフに関心のない若い視聴者たちも春の存在を知るようになる。
日本人離れした目鼻立ちと、筋肉質で高身長の女子プロゴルファーに
ロハスハウスフリークの若者たちは熱狂した。
「私も春のような顔になりたい。」
「春のような見た目になるにはどういうメイクをしたらいいの?」
「春のお尻は筋トレの成果なの?私もジムでヒップアップトレしてるけど、
どうしても春のようなヒップにはなれないんだよね。
これってトレーニングの成果だけじゃなく、遺伝子レベルの話だよね?」
「サトルのだめ具合に本気で説教する春の目が最高。
あんな激しい目で怒られたら、一瞬で恋に落ちてしまうわ俺。」
「誰が春とカップルになるんだ?そいつ絶対許せない!
春とは俺が付き合うんだ!」
と、サクラテレビでの放送終了後のツイートは春ファンのコメントで花盛りだ。
そんな状況を一変させたのが、
ロハスハウスプロデューサーの大岩からのヤラセ演出だった。
「春ちゃん、君はなぜかパンチが足りないんだよね。
その勝ち気な目には似合わないほど大人しすぎて面白みがない。
もっと自分のリミッターを外した演技しちゃわないと!
出来ないんなら仕方がないから俺達から状況設定させてもらうから。」
大岩は、九州の大学を出て当時破竹の勢いで成長して、
地元のプロ野球球団を所有していたIT企業の社員から、
何故かサクラテレビに中途採用で入社してきた経歴のテレビ局員だった。
恐らく、コネ入社だろうとサクラテレビの関係者からは陰口を叩かれていた。
その悪評を覆すために、九州から出てきた田舎侍は
必死に視聴率を上げる努力をした。
朝の情報番組のアシスタントディレクターからキャリアをスタートさせ、
夕方のワイド番組のメインディレクター、
ゴールデンタイムのドッキリ番組のプロデューサーと
放送マンとしての成功の階段を駆け上がり、入社して20年で
若者に人気のリアリティー番組のプロデューサーに抜擢された。
大岩は、視聴率を上げるためならどんな手を使ってでもやり遂げる男だった。
地上波のテレビ局の視聴率ほどアテにならないものはない。
視聴率という指標は、限りなく少ないサンプルによって成り立っている。
なので、その限りられたサンプルに便宜を与えることで
このあてにならないデータは簡単に改竄できるのだ。
視聴率を稼ぐために次から次への、取材攻勢をかける対象を変えて
視聴者の関心を惹きつけているマスコミは、
なんと、あろうことか、これこれの番組が人気があり、視聴されているとされる
エビデンスであるデータまで操作していたのだ。
まさに【マスゴミ】だ!
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