短編集 女々しい恋愛
枯れた木
第1話 初恋の末路
ぼくの股間に漸く男らしさと言わんばかりに毛が生えてきた頃、人を恋するということをはじめて知った。
初恋だった。
それもただの初恋なんかじゃない。
正真正銘の運命の出会いだった。
何たってこの恋は一目惚れだったのだ。
初恋は玉砕する、というのは俺が大学生になってから気づいた事である。
例に漏れず、ぼくも運命の初恋は実ることなく終わりを告げた。
彼女の為には何だってしよう、絶対に守ってやろう、絶対に幸せにしてやろう、本気で結婚したいと思っていた。
そして、彼女に本気の告白を届けることを決めた。
彼女とは家が逆方向なのに何とか一緒に帰る口実を作り、贈り物を用意して、ちゃんと言いたいことが言えるようにメモをきちんと暗記して。
そしてぼくは彼女に告白した。
「好きです。君とは結婚したいと思っています」
齢十四歳のことである。
そして、彼女は困ったような顔をしてこう言った。
「ごめんなさち……重い……」
ぼくの初恋の玉砕の瞬間であった。
あれからその初恋を引き摺ったまま、俺は大学生になった。
そして、大学生になった俺はまた運命の出会いをした。
これはやっぱり運命なのだと。
初恋だった彼女が同じ大学のキャンパスにいた。
さっそく話しかけて見ようと思ったけれど、隣には俺の知らない男がいた。
俺よりも高身長、端正な顔立ち、何より整った身なり。
「負けたな…………」
俺は彼女に話しかける勇気も自信も喪失してしまった。
そして嫌な思考回路が俺の頭を過ぎった。
どうせ今日の夜彼女はキングサイズのベッドの上で、男の肉棒を狂った表情で、狂った嬌声をあげて咥えているのだろう。
愛の印と称した愛液で誰かを包み込んでいるのだろう。
俺は心の中で昔の僕に深く溜息を吐いた。
「この童貞め!」
短編集 女々しい恋愛 枯れた木 @0ituki
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