遠乗りと買い出し
訓練場から出てビルヴィス家まで戻る。時間があるからフウイの様子でも見てみようかな?
「ランス様。お戻りならお呼びください」
「フウイのところに行こうと思ってね」
シャロンがいつの間にか来ている。
「厩舎の場所は知っているのですか?」
「だいたい見えにくい場所のはず」
「そうかもしれませんが、ご案内します。ついていけないので、この家の部屋や施設は把握しました」
「いいね、シャロン。それなら迷子にならない」
建物に隠れて正面から見えない場所に厩舎があった。白い馬は他にいなかったから、すぐにフウイがわかった。ちゃんと言うことを聞いて、迷惑はかけていない様子だった。毛艶がいいみたい。よくブラッシングしてもらっているのかな?
「明日は遠乗りに行こうと思うんだけど、今日は王都の中を散歩する?」
嘶くフウイは興奮気味だった。運動出来なかったからね。ベイジーンの家の世話係が鞍とかをつけてくれた。それにシャロンと一緒に乗って、買い物に出かける。
主に食料品の買い足し。シャロンはお肉から干し物、パンもそれなりに買っている。屋台の食べ物も買い回っている。シャロンも散歩しているみたい。すごく楽しそう。
「明日はどこまで遠乗りしようか?」
「日帰りがよろしいかと思います。泊まりになりますと宿泊の手配が必要になりますので、確保出来るかどうか」
「シャロンが野宿は無理か。ボルギ子爵のところまでなら、何か買い物して帰るぐらいは出来そうだけど」
「行きましょう」
即答のシャロン。あれからどうなっているのかも気になる。そういえば、グレース嬢は領地に着いたのかな?観光のつもりだし、特産品とかがあると思う。お金持ちだって聞いてる。
王都ですぐに食べられる食料を買い込んだ。シャロンは食べ物の確保に力を注いでいるようだった。シャロンが1番わかっていると思うから、買いたいものがある店を巡る。食べ物の店じゃないところもまわった。
帰ってからフウイを洗ってやる。大人しいのでとても気持ちがいいのだろう。世話をする人と一緒になって、洗った。大きいから大変なんだけど。
「フウイの遠乗りに行ってくる。日帰りだけど」
「どこまで行くつもり?まさかだけど、国境を越えるとかはやめてよ?」
「日帰りで国境は越えられないよ。片道ならいけるけど。行くのはボルギ子爵領。日帰りで、何か特産品があるんだよね?それでダンジョンよりも収入があるって聞いたことがある」
「有名なんだけど、ワインに力を入れているんだ。ブドウの栽培に力を入れていて、何本か買っておくといいよ。群衆突撃で被害がないといいけど」
ブドウか。ブドウは美味しいのかな?
「ランスにはまだ早いけど、飲めるようになったら気に入るはずだよ。飲みやすいのもあるから、買う店で教えてもらうといい」
「ブドウは美味しいのかな?」
「食用は腐るからこっちまで流れにくいんだよ。ランスの作った冷たくする魔道具やマジックバッグの時間停止タイプじゃないと、時間で食べられなくなる。専門で流通させる商家もあるけど、飛竜を使っているから特別な料金がいる。だからワインにするっていうのもあるんだよ。干したのもあるかな?」
「生もあれば食べてみたいな。あるといいな」
朝食を取るときにローレット様からワインの注文を頼まれる。
「ボルギ子爵のワインは美味しいから何本か買ってきてくれる?」
「買うものがわからないので、向こうの人がわかるようになりますか?」
「飲んだことないの?」
「ないです」
「そういえば、祝福を受けたばかりね。まだ早いわ」
執事さんが呼ばれて、ワインについて話し合っている。そのあと、買ってくるワインを手紙に書いて渡される。何を買うかはわからないんだけどね。ワインって美味しいのかな?
フウイは準備万端でシャロンを乗せて出発、王都を出てから空へと駆け上がる。いつもより強めに抱きしめられている。慣れるまでは怖いよね。時空間魔法か、風魔法の中に空を飛べる魔法があるから、平気なんだけどね。空を駆けながら、街道沿いに飛んで行く。
前回も来た領主街、サルエン男爵のところとは違い、広くて人も多め。冒険者も多い。降りて入場の列に並ぶ。
「フウイはすごいですね。こんなに早く着くなんて。信じられません」
「空を駆ける馬だからね。飛竜にも負けないよ」
「伝説になるほどですから、素晴らしい体験でした。ただ、高いところは少々恐ろしかったです」
「落ちても魔法でなんとかするから、そんなに気にしなくていいのに」
「絶対に落ちたくありません」
ワインとブドウ。ブドウは美味しいかな?干しブドウになるのかも。
並んでいると馬に乗った騎士達がやってくる。顔は見たことがある。
「ランス様、子爵領へようこそ。どういったご用件でしょうか?」
「街が大丈夫だったかの確認とボルギ子爵領で買い物をするつもりで来た」
「そうでしたか。わざわざありがとうございます。街の恩人をお待たせしてはいけません、こちらへどうぞ」
馬の後ろについて、門へと向かって行く。門で何かするのかと思ったのに、敬礼をされてそのまま通過する。
「ようこそ、ボルギ子爵領へ。何を買われるか、お決まりでしょうか?」
「ワインのお使いを頼まれてる」
案内されるままに、お店に案内された。案内した兵士達はこれで戻りますと帰って行った。
「本日はどのような品をお探しでしょうか?」
「まずはこのワインを用意して欲しい。頼まれたから」
手紙を渡すと、ビクッとした。そのままカウンターに入り、手紙を確認すると数人が集まって、準備をし始めた。その間、並んでいるワインを眺めている。何がいいんだろうね?わからないから、瓶を眺めて時間を潰す。
「シャロン、何が美味しいのか知ってる?」
「ここのワイン自体が美味しいと聞いたことがあるので、どれを買ってもよろしいのではないでしょうか」
「飲むのは先だし。どうしようかな」
準備出来た商品を見ると、樽まであるんだけど。瓶も箱も大量だと思うんだ。会計は済ませて、回収する。
「おすすめのワインってある?飲めるようになったら飲んでみたいから」
「はじめに飲まれるのでしたら、渋みの少ないこちらやフルーティな味わいのこちらなどが、よろしいのではないでしょうか。まずは慣れていただいて、料理に合わせてワインをセレクトしていただくことで、お酒に馴らされてはいかがでしょうか」
「じゃあ、おすすめをください」
「最初ですから少なめにしますか?」
「樽で」
一瞬、固まったけど動き出すといくつかの樽が出てきた。
「説明書きを蓋に張りますので、少々お待ちください」
初めて飲むときにいいワインと食事に一緒に飲むといいワイン。なんの食事に合うかも書いてくれている。これで飲むときにわかる。
「それではお待たせしました」
買い取りを済ませると店の人に見送られて、街の中へ出る。冒険者もいるし、商人も飲んだくれもいる。街を見て回る。
「そうだ、ブドウはあるのかな?」
「ブドウですか、果物屋があるので聞いてみましょう」
果物屋にシャロンが聞いている。ブドウは時期じゃなく、そもそもワイン用なので食べないそうだ。食べるのなら、今だと干しぶどうしかないとのこと。時期的には多少の果実はあるが、干し物がいいと言われていた。そうなのか。
「残念ですが、ブドウはないようです」
「そっか。じゃあしょうがないね」
他に何があるのだろうか。ダンジョンに行くつもりはないから、街の中でいいものはあるのかな?屋台の前を通って、美味しそうな串焼きとかを食べてまわる。タレが美味しいんだよ。シャロンと共に店を見て回る。
とにかくワインの店が多い。それに合わせてか、食べ物の店も多いかな。群衆突撃の影響は小さいようで、賑わっている。これでグレース嬢も安心かな。子爵は無事だったし、街も騎士団も無事だった。
表通りを一通り楽しんだ。食べ歩きに買い込みとやり過ぎたのかもしれない。買い込んだ店が閉店した。シャロンは気にした様子がない。干しブドウのクッキーが気になってみてみる。食べたらブドウの味が濃く広がって、クッキーがなくなっていた。
「これ美味しい。あるだけ頂戴」
「ぜ、全部ですか?食べきる前に腐らせてしまいますよ?」
「その心配はいらない。あるだけ欲しい」
木箱に入ったクッキーが山のように並ぶ。自分の倉庫に5箱、残りはシャロンのバッグにしまい込む。
「ありがとうございます」
美味しい物もたくさん買い込んだし、満足した。
「帰ろうか。シャロンはもういい?」
「はい。十分に買い込みましたので、大丈夫です」
フウイに乗って、王都へと帰っていく。結局食べ歩き中心だった。街は活気があったし、美味しいものもたくさん食べた。
戻ってワインを執事さんに渡しておく。お金をもらったけど、シャロンにそのまま渡した。
「こんなに管理出来ません」
「じゃあ、自分で持っとくか」
預かってもらえなかった。しかたなく自分の倉庫に入れておく。
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読んでくれてありがとうございます。
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