公爵家で夕食

 エロイーズ達がグレンフェル家で降りるとローレット様と2人きりになる。


「エロイーズと仲が良いのね?」


 口元は扇子を広げて見えない。


「そうですね。何度も剣の訓練をしたので、練習仲間のような連帯感はあります。あの家に滞在していた時間が、1番楽しかったからかも知れません」

「どうするのが1番いいのかしらね?この国を許すことはないの?」

「ありますよ」


 ほの暗い感情が渦巻く。


「王族を滅ぼすことはできない。それ以外は?」

「国ごと滅びますか?」

「出来るというの?」

「悪い人だけ死んで欲しいのですが、この国に住んでいるので同罪と見なせばいいのです。やるかやらないかだけです。出来る出来ないはすぎています。生活魔法で滅ぼせるでしょう。そんなに時間のかかることではないでしょう。国の中を移動する時間がかかる程度です」


 この国の軍事力はたいしたことがない。それを知っているから、戦えるかがわかる。


「そんなに差があるものなの?S級冒険者は国を滅ぼせると聞くけど、なったばかりでしょう」

「なる前に、ファイアドラゴンと同等の戦いをしています。ファイアドラゴンが国を滅ぼせるなら、同様の力があるのです。ドラゴンが国を滅ぼせるのに、ドラゴンに力を認められた人が出来ない道理がありますか?」

「ドラゴンに認められているなら、そうなるわね。生産に戦闘、魔法まで。どれほど優秀な師匠だったの。有名な人に教えてもらったのでしょう?」

「教えることはないといわれるぐらいには、多くのことを教えてもらいました。師匠には尊敬と感謝しかありません。本当にたくさんのことを、教えてもらって、詰め込んでもらいました」

「教えてもらったのはどのくらい?」

「4年です」


 扇子が閉じられ、微笑みを浮かべている。


「それで、どのようなことを教わったの?」

「魔法に古代魔法、古代語。薬師の技術と知識、付与や魔道具です。最後は古代魔法の研究をしていました。戦闘は全般です。剣術についておじ、いえ、マクガヴァンという剣術指南をやっている人に聞いてもらえれば」

「4年で今の状態まで?」

「その時から上がっているのは、生活魔法がレベル1上がりました。そのぐらいです。もっと自由にやりたいです」


 なかなか家に着かない。キレイな人なんだけど、圧があるんだよね。


「貴族になるよりも、国の保護を受けるよりも生産の勉強がしたいというの?」

「自分より弱いのに守られるとか、よくわかりません」

「弱いというけど、極めた者はいるのよ。水はレベル8」

「すいません、ローレット様。魔法は生活魔法でレベル8。4属性上位魔法を無詠唱で使用出来ます。せめて無詠唱でのレベル9以上の使用者ならお話を続けてください。戦闘ならドラゴンを倒せた者かそれと同等以上の方がいらっしゃる場合、極めた者とおっしゃってください。お願いします」


 扇子を掴む手が震える。それ以上の話はなく、家に着いた。着せ替えが大変だった。


「お帰りなさい、母上。ランスもお帰り」

「ええ、ただいまベイジーン」

「服屋が大変だったよ、ベイジーン」

「それを乗り越えないとね、2人ともお疲れでしょうから中へ入りましょう」


 出迎えてくれたベイジーンと一緒に屋敷の中へ。


「ベイジーン、少し話があります。ランスは客室へ案内して」

「かしこまりました、奥様」


 客室に案内され、疲れたとイスにうなだれる。


「シャロンはいつ夕食にするの?」

「ランス様と一緒にならない時間にです」

「じゃあ、今行ってきなよ。夕食までは休みたいからさ」

「それではお言葉に甘えて」


 シャロンは部屋を出て行くと、部屋の中で1人になる。いつも誰かいたし、忙しくて1人だと思えていなかった。久しぶりに疲れた。

 

 目を閉じると涙がこぼれる。何でかな?何かを思い出したのか?ソファに横になると天井を見上げて、何をしたいのか自問自答する。


「いろんなものを作りたい。もっと、魔法のことを知りたい。もっと強くなりたい。もっと、もっと。奪われないように」


 こぼれる涙。もっと強く、もっといろんなことを知らなければならない。学園に行っている暇などない。強くなりたい。大切な人は残らず、犠牲になった。足りなかった。だから失ったんだ。



 シャロンが帰ってきて、食事に呼ばれる。公爵家の面々が揃っていて、食事になる。当主が口を開く。


「学園から禁書庫に通えるようにする件だが、許可が下りた。ただし、授業をサボってまでいかないように。学園のほうでも学べる授業がないか、参加できそうな授業を探している。もしも、学べそうならとるように」

「わかりました。学べそうなら取りますが、最初の授業で学ぶことがなければ、行かなくてもいいですよね?」

「取ったらちゃんと行くように。教養の歴史と貴族の基礎素養は学ぶことがなくても、単位は取るんだよ」

「指定された授業は取りますが、取れそうな授業で、取ったあとに参加してもすでに知っていることを授業でされた場合は、やめてもいいですよね?」


 ああなるほどと、手を止めてこちらを向く。


「そうだな、その場合は学園長に相談してくれ。確かにそういうこともあるだろう。学園長が判断をしてくれる。そこで交渉するといい」

「それなら、わかりました」


 今日あったことなどを話して、和やかに食事は終わった。



 部屋に戻るとシャロンに、詰め合わせたデザートを食べさせる。美味しそうに食べていたけど、どれだけ食べるんだろう?途中から見るのをやめて、グリじいの残した資料に目を通す。出て行ってからはそんなに進んでない様子がうかがえた。1人だと限界もあるからね。

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読んでくれてありがとうございます。

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