公爵夫人5

「どうかしら?」

「しかし、ランスが、ランスは私など望んでいないです」

「ランスはどうなの?人となりは知っているのよね?よい縁談とは思わない?」

「申し訳ありません。エロイーズ様はよい方なのですが、2度とこの国の貴族の方々と類縁になりたくありません。良縁であるのですが、お断りします」


 ハッキリと言葉にする。振り回されることも、勝手に話を進められることも絶対にイヤだ。そういうところで信用が全くない。祝福を受けたからといって許されると思っている?


「ランス、ランス、断る理由はわかった。だから、威圧と殺気を抑えてくれ」

「そう?何か問題でもあるの?」

「や。やめてくれ」

「この程度でひるんでいて、国を守れるの?生産の勉強がしたいから、学校に行かなくてもいいよね?」

「それは、聞かれてもわからない」


 エロイーズはそういってから泡を吹いて、白目をむいた。対抗の訓練もしていないなんて、怠慢も甚だしい。


 ナプキンを持って口の周りを拭うと、魔力で刺激を与える。体がビクンとして瞳が開く。


「あ、あれ」

「対抗するための訓練もないみたいで、失望から絶望に変わったよ」

「ランスが強すぎるだけだろう」

「そう?力を振るわずに奪われるだけの平民だよ」


 席に戻ると食事を再開する。食事を終わらせるとデザートのお店へ移動。


 案内された個室に通される。楽しみにしていたので、出てくるデザートに舌鼓を打つ。甘すぎず、冷たいデザートも冷たくないデザートもあった。蜂蜜たっぷりのカリカリトーストも美味しかった。振り向くとシャロンが恨めしそうに見ていた。一通り食べて、冷たい牛乳のデザートをたくさん頼んで、味付き氷も頼む。


「どうやって持って帰ろうか?皿ごととはいかないよね?」

「ランスのクリスタルで入れ物を作ればいいだろう。いろいろ作れるんだろう?」

「そうか、それが手っ取り早いね。シャロン、冷保庫出して」


 クリスタルを作り出しては、デザートを詰めていく。それは保冷庫へ。あと一通りのデザートをクリスタルに入れて、直接マジックバッグに入れておく。


「そんなにため込んでどうするんだ?」

「食べたいときに食べる。暑くなって食べたいときに、あるといいでしょう?」

「そうかもしれないが、まあ、好きにするといい。そのマジックバッグはシャロンに買ってやったのか?」

「違うよ。作ったの。冷保庫とマジックバッグを作って、バッグは使いやすいのをそうしただけだよ」

「待て、時空間魔法が使えるのか?」

「魔法適正ないとその魔道具作れなかったと思うけど」


 冷たい固形の牛乳を一口運んで食べた。


「ふう、落ち着いた。それって大陸でも数人しかいない魔法が使えるのか?本当か?何が使えるんだ?」

「じゃあ、時空間魔法のシールドを使うから、さわってみたら?シールド」

「どこにあるのかわからない。どこなんだ?」

「俺の前にあるよ」


 席を立って近づくと手を出して近づける。


「何か、壁のような物がある。なんだこれ?すごいな、叩いても大丈夫なのか?」

「剣で切れないぐらいは強いはずだよ」

「おお、すごいな」


 エロイーズは手のひらで叩いてみて、スーと手を滑らしながら時空間魔法を楽しんでいた。


「すごいぞ、これ。何でも出来るなランス」

「頑張ったんだ。強くなるために。守れるように。何でも出来るように。それでも生産系は薬師や魔道具関係しかわからない。武器や防具とかも作ってみたいんだ。祝福もらったから、いろいろ出来るって楽しみ」

「職ももらってないのにか?」

「スキル取得から頑張るよ。それで職出す」

「そうか、が、頑張れよ」


 エロイーズはいそいそとイスに戻って、デザートを食べ始める。固形の牛乳は他に味がないのかな?


「この国にいてくれる方法はないの?」

「王族がいなくなったら、いいですよ。3代ぐらい遡って、滅してくれるとよりいいです」

「代わりに姫を降嫁させるのはどうかしら?」

「貴族や王族との婚姻はこりごりです。2度としたくありません」

「もう、邪魔は入らないのよ?」


 首を振って、最後の一口を食べきる。


 あれと兄弟になるなど、考えたくもない。それに王を殺すかもしれないな。そのあとが面倒だろうからやらないけど。


「この国にいてよかったといえば、肉体耐性Lv.10、精神耐性Lv.10になったことぐらいです。なりたくもなかったスキルです。本当に」

「それは、どれほどの苦難を乗り越えて至るレベルなの?」

「最後は特別な条件を達成することでなるのでしょう。レベル8までは、耐えることで上がるはずですから。上がらないはずのレベルをこじ開けてくれたのです。賠償は早急にするべきだと思いませんか?」

「それは王が決めるから、それを待つだけよ」

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読んでくれてありがとうございます。

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